JFA DREAM 夢があるから強くなる











イビチャ・オシム氏がアドバイザーに就任〜「今度は私がみなさんに“がんばれ”と申し上げる番です」〜 (08.06.11)

 日本サッカー協会(JFA)は前日本代表監督のイビチャ・オシム氏とのアドバイザー契約締結に伴い、6月4日、記者会見を行った。昨年11月に脳梗塞で倒れて以来、初めて公の場に姿を現したオシム氏は驚異的な快復ぶりを見せ、変わらぬオシム節”を披露するなどして会場を沸かせた。
 今後は指導者養成やユースの育成のほか、海外の最新情報の収集など、日本サッカーの発展のために力を注ぐ。
 
 190cmの巨体を揺らしてオシム氏が会場に登場すると、一斉にカメラのフラッシュがたかれた。公の場に登場するのは約8ヶ月ぶりということもあり、この日は100人もの報道陣が詰め掛けた。
 マイクが向けられると、オシム氏は開口一番、「向こう側の世界まで行って戻ってきました(笑)」と一言。相変わらずのウィットに富んだコメントは、健在ぶりをアピールするのに十分だった。
 「私は努力して、この場に戻ってくることができました。それはプロとしてやらなければならない努力をしたのです。それにしても、こんなにたくさんのフラッシュがたかれるならサングラスを用意してくればよかった(笑)」と話す表情には精悍さがみなぎっており、厳しいリハビリテーションに励んだ痕跡が表れていた。
 オシム氏が日本代表監督に就任したのは2006年7月。翌8月、初めて日本代表監督として指揮を執るキリンチャレンジカップの発表記者会見では代表メンバーを13人しか発表せず、「11人以上いるので試合はできますよ」と、半ば困惑する報道陣に余裕の笑みを投げかけた。以後、オシム氏は日本代表を率いて20試合12勝3敗5分。キリンカップサッカー2007 優勝、AFCアジアカップ2007 4位、3大陸トーナメント 優勝という成績をあげる。しかし、2010 FIFAワールドカップ 南アフリカアジア3次予選の開幕まで3ヶ月を切った昨年11月、オシム氏が伝承するサッカーが具現化されようとした矢先に不幸にも脳梗塞で倒れ、病床に臥すことになった。
 「人間、誰にでも人生の中でひとつ、あるいはそれ以上に、何かこれだけはしたいという希望があると思います。それがあったから私は戻って来ることができた。つまり、私がやり始めた仕事をまだ完成できなかった、この思いが私の復帰を後押ししたということです。私が代表監督を引き受けたときの希望というのは、日本代表をワールドカップに導くということが最低限の目標でした。今、もっと大きな希望は持ってますが、それは内緒にしておきましょう」と、早くも次なる目標に向かって歩き出したことを示した。
 オシム氏は、日本サッカーについて、「日本のサッカーは日本人自身の力でもっとよくすることができる。それを生かすことができれば、世界チャンピオンになることも不可能ではない。それは大きすぎる夢かもしれません。大きい夢だから少々時間がかかるかもしれない。しかし、その夢が実現できればいいと思っていいます」と話し、「日本語はあまりできませんが、覚えた日本語のひとつに“がんばれ”という言葉があります。戦うという意味でしたね。今度は私がみなさんに“がんばれ”と申し上げる番です」とエールを送った。
 またその一方で、「日本のサッカー選手は、もっと走らなければなりません。良いサッカーをするには、もっと走る量を増やさなければならない。技術力があると言われている選手も、まだ不十分。子どものときから、動きながら技術を習得するということをしていかなければならないし、現代のサッカーはプレースピードのスピードアップという方向に進んでいるので、考えるスピード、そして走るスピードを速めないといけません。そうすることで、速いプレーが可能になります。サッカー強国のイミテーションを繰り返しても彼らを越えることはできないでしょう。真似をするということは良い方法ではありません。ですから、日本のサッカーはまずコンプレックスから解放されて、自分たちのストロングポイントに自信を持つことです」と、熱いまなざしで日本サッカーの課題を語った。
 「私はどんな場所でもサッカーの話をするのが好きです。どんな仕事をするにしろ、私は日本に来て日本のサッカー界に何か自分がいたという形跡を残したい。(日本代表では)それを残すことができなかったが、別の方向でポジティブな変化を与えたい」と力強く語ったオシム氏。道半ばで日本代表監督を辞することにはなったが、今後は、日本サッカーの底上げとトップレベルの強化に力を注ぐ。その最初の仕事となるのは、サッカー欧州選手権(EURO2008)などでヨーロッパの最新のサッカー情報を収集してもらうこと。川淵キャプテンも、「オシムさんは、日本サッカーを少しでも良くしたいという気持ちを持ってくれている。彼の力を借りない手はない。彼の才能が指導者養成から代表に至るまで、良い影響を与えると確信している」と期待を寄せている。
 「夢を見ることは禁じられていません。夢を見たって、いいじゃないですか。みなさんも夢を見ませんか?」。日本サッカーの夢の実現に、オシム氏の英知と経験が生かされようとしている。

※イビチャ・オシムのサッカー哲学は、こちら