JFA DREAM 夢があるから強くなる











女性初のS級ライセンス取得へ 〜本田美登里氏の挑戦〜 (2006.11.02)

 現在、日本サッカー協会が認定している指導者資格は5つある。サッカー指導者として第1歩となる「公認D級コーチ」から始まり、指導段階に応じてC、B、Aとステップアップしていく。そして最高位となるのが「公認S級コーチ」だ。主にプロチームやプロ選手の指導を担う“プロコーチ”というべき存在である。Jクラブのトップチーム監督にはS級ライセンスの取得が義務づけられている。
 
 8月26日〜11月29日の期間、そのS級コーチ養成講習会が行われている。2006年度のS級コーチの認定を受けるために集まったのは24名。月曜から木曜まで実技、講義を含め、延べ3ヶ月に及ぶカリキュラムが組まれている。受講者は国内短期講習会(11日間)、国内集中講習会(10週間)、指導実践試験(4日間)、インターンシップ(3週間)を経た後、JFA技術委員会において審査され、同理事会において承認されてはじめて認定される。
 今年度、初の女性受講者がいる。本田美登里氏である。本田氏は現役時代には読売ベレーザに所属し、日本女子サッカーリーグ3連覇に貢献した元日本女子代表。これまで、U-18日本女子選抜コーチや、2005ユニバーシアード女子代表監督も務めており、現在、モックなでしこリーグの湯郷ベルを率いて6年目を迎える。
 「昨年、ユニバーシアード大会を戦ってみて、もっと指導者としての引き出しが欲しいと感じたんです。チームも6年目ですし、マンネリ化していないか、もっと何かできないかという思いがあって、この場を選びました」。朝から晩までの講習の毎日は学生時代よりも勉強しているのだとか。
 「こんなに勉強はしなかったですから(笑)。でもコミュニケーションスキル論やディベート講習なんかは今まで自分が思いもしなかった世界だったので新鮮でした。実技でもこれまでのクラスでは、あるテーマがあってそれを改善するだけでよかった。でもS級の場ではそのエリアの改善のためにそのまわりはどう動かすのか、それでダメだったら次の手は?次の次の手は?と、先の先まで考えてトレーニングを作れますかっていう具合なんで視野も広く構えなければなりません。ここで吸収すべきことはたくさんあると思います」。
 指導養成チーフの眞藤邦彦氏は本田氏の姿を見てこう言う。
 「やはり女性ということで彼女自身がまわりに対して遠慮があるんですよね。彼女はその殻を破っていかなければならない。ここに来ているということはトライする向上心があるということですから、この期間中にしっかりと力をつけていってほしいですね。プレッシャーをかける訳じゃないんですが、ここを巣立って活躍する姿を私も見たいですから」。
 そこのところは本田氏も自覚はある。だからこそ、ここからが正念場だろう。
 「自分が限界だと思った時点でそこが限界。限界は人が決めることではなく、自分で決めるものだと思うんです。同じ立場にいる人、例えば女性で指導者を目指す人も今後増えてくると思うんですが、強い思いがあるのならチャレンジしてみるべきだと思います」。
 自分は指導者らしい指導者にはならないし、なれない。それが私のオリジナリティだと語った本田氏。これから追い込みの時期に入る。自らの殻を破ったとき、どのような指導者へと変貌を遂げているのだろうか。そしてどのような指導者へと成長していくのだろうか。本田氏の挑戦はまだ始まったばかりだ。

(文/早草紀子)