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女子サッカーレポート
積極的なプレーを目指して〜阪口夢穂の東アジア選手権〜(08.03.07)

 東アジアサッカー選手権で新生ボランチとして活躍を見せた阪口夢穂。20歳で初タイトルを獲ったピッチに立った阪口にとって東アジア選手権はどのような大会だったのだろうか。
 劇的な逆転勝利に沸いた初戦の朝鮮民主主義人民共和国戦。フラットな中盤をひいた4-4-2システムのボランチに入ったのは澤穂希と阪口夢穂だった。阪口は前線、トップ下で培った持ち前のポテンシャルの高さを生かし、見事にその責務を果たした。この日、阪口は1年前のキプロス遠征のスコットランド戦以来、久しぶりにスタメンスタートとなった。ボランチのポジションは所属するTASAKIペルーレで少し携わった程度。そんな阪口に佐々木則夫監督が正ボランチを意識させたのは東アジア選手権の直前合宿で行われたジュビロ磐田ユースとの練習試合だった。
 「この合宿では完全に2チームに分かれてゲームをしていたんです。いわゆる、レギュラー格のAチームとサブのBチームです。私はこの合宿でBチームに入っていたので、この日も午後からのBチームゲームに出る心づもりでした。でも当日の朝、張り出されたAメンバーに自分の名前があって・・・。念のため確かめておいてよかったですよ、ホント(笑)。ただただビックリしましたね」と阪口。それ以降、阪口はレギュラーとしてボランチに入ることになる。本人の戸惑いをよそに指揮官の心はすでに決まっていたようだ。重要な初戦で佐々木監督は阪口にこのポジションを託したのである。アウェイの中でも堂々とプレーしていたように見えたこの初戦も、阪口にとっては全く逆の心境だったと語る。
 「余裕?そんなものありませんでしたよ。途中から4-1-4-1に変わったでしょ?舵取りが私一人になったじゃないですか。すごくテンパりました(笑)。1ボランチなんて練習で“ひょっとしたらやるかもしれないから・・・”ってちょっとだけかじった程度だったんです。相手の猛攻の時なんて、誰につけばいいかわからないし、どこに戻ればいいのかもわからないまま、ただ夢中に走ってました。だから澤さんの逆転ゴールが決まった時、本当に嬉しかった。あの時だけ少し余裕がありました(笑)」。
 もともとは前線の選手。U-19女子代表の中心選手として活躍し、満を持してなでしこジャパンに上がってきた。ここ数年はパスに魅力を見出し、2列目でプレーすることが多かった。その能力を見込んで、攻守の要となるボランチというポストに阪口を選んだのである。
 ところが、阪口には困った癖がある。日常では全く感じないが、ゲームとなるとスペースやボールを味方に譲ってしまう、やや消極的な面があるのだ。佐々木監督からも試合中に「行ける時は行け!」と何度もゲキが飛ぶ。
 「自分でも積極的に行きたいとは思うんですけど、まずパス先を探してしまうんですよね。自分で行くという選択肢は後回しにしてしまう。今のポジションだと特に迂闊に上がっていけないし、澤さんの位置を常に意識していなきゃいけないから、澤さんに任せちゃってるところはあると思います。でも中国戦では少し前に出る時間帯もありました。とはいってもまだ自分で評価できるようなところまではいってないです。感覚を今、模索中といったところでしょうか。今年はこの点が課題です」。良い意味で、敵だけでなく味方も振り切って行くような強気なプレーが出るようになれば澤とのコンビにもますます厚みが増してくるに違いない。
 確かにベテラン勢との経験の差は大きいかもしれない。だが、ここで阪口や宮間あやといった若手選手がその実力を発揮していけば、なでしこジャパンは大きく飛躍出来る。失敗を恐れず、叱咤激励を受けながらも、今は強気に前へ進んで行ってほしい。先輩もそうやって成長してきたのだ。今の若手に出来ないはずはない。そこの温度差さえなくなれば、チームは必ず一つになる。そのとき、本当の強さが生まれるのではないだろうか。

(文/早草紀子)