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女子サッカーレポート
実践の中で意識改革を〜なでしこジャパン・キプロス遠征〜(08.03.21)

 なでしこジャパンは3月1日〜13日、昨年に引き続き、キプロス遠征を行った。
 なでしこジャパンは東アジアサッカー選手権を戦った後、1週間と空けずにキプロス遠征に旅立った。この2週間の遠征は前評判通り、心身共にハードなものとなった。
 今回招集されたのは、佐藤衣里子(早稲田大学)、鮫島彩(TEPCOマリーゼ)、そして高校生の後藤三知、熊谷紗希(ともに常磐木学園)ら4人の新顔を含む20名。しかし、その中に澤穂希、池田浩美、加藤與恵、山郷のぞみといったいわゆる“ベテラン”勢の名前はなかった。ここに佐々木則夫監督の意図がはっきりと読み取ることができる。――“意識改革”だ。プレーの面ではもちろん、精神的にも先に挙げた“ベテラン”勢は中心的柱となっている。しかし、それ故にどうしても、ベテランに頼りがちになってしまう。一人一人の自立がチーム力アップに不可欠と判断した佐々木監督は、中堅以下のメンバーのみで海外遠征に踏み切った。
 通常は所属チームでフィジカルトレーニングに励むこの時期。キプロスの地でも、もちろんフィジカル強化にも力が注がれた。有酸素運動、ビーチでのフィジカルメニュー、ウォーミングアップ時にも一切の猶予を許さず、それぞれが取り組むべきものを明確にした。スケジュールは実にハードだ。1日に日本を発ち、キプロス入りしたのは2日。その後すぐにトレーニングを開始し、5日にはオランダとのテストマッチ(○3-1)を行った。そして7日からはCYPRUS WOMEN`S CUP 2008に参加。中2日ペースで予選グループリーグ、3位決定戦を戦った(結果は3位)。これだけでもかなり充実した内容だが、今回の遠征はこれだけではない。カップ戦の中日にもさらにスコットランド、WFCロシアンカ(ロシアのクラブチーム)とのテストマッチが組まれた。試合のない日は早朝、午前、午後、夜と4部練習になることもしばしば。選手たちは極限状態の中でトレーニングに臨んでいた。
 「言葉でゲキを飛ばしてもわからない。本当に自分たちが経験のある選手なしでもやれるんだという実体験がここで必要だったんです。北京オリンピックのボトムアップはもちろんですが、それだけでなく、今後のなでしこジャパンにも大きく関わってくることだと思っています」と語るのは佐々木監督。とはいえ、これだけのハードメニュー。疲労からくるトーンダウンや、ケガも懸念されたが、それも杞憂に終わったようだ。「2〜3日ペースが落ちることはありましたが、中盤に差し掛かるとみんな元気になってきたんですよ。大きなケガもなく、いい状態で遠征を乗り切ったことは選手たちも自信につながると思います」(佐々木監督)。国際大会を戦いながら、強化スケジュールもこなす。苦しい状況の中でいかに自己管理し、コントロールしていくか。この遠征では新たな弱点などを含め、それぞれに新しい発見があったのではないだろうか。佐々木監督も好感触を掴んでいる様子。「初招集メンバーには高校生という若い選手もいます。プレーの質などはレギュラー組と比べるとまだまだ足りないところもありますが、がむしゃらさ、必死さなど、彼女たちを上回るものも持っている。一緒にプレーすることで互いに刺激を受け、相乗効果が生まれています。この短期間で劇的に変わるということはないでしょうが、何かきっかけは掴んでくれたのではないでしょうか」。
 今後、選手たちは所属チームへ戻って活動し、なでしこジャパンが再び集結するのは5月中旬。アジアカップに向けての強化合宿だ。ここで東アジア選手権、キプロス遠征で得た課題に取り組み、本格的な戦術やコンビネーションに着手することになる。アジアのライバル諸国も今度は新生日本をしっかりとスカウティングしてくるはずだ。真の意味で佐々木ジャパンの実力が試されるのはこのアジアカップかもしれない。心・技・体すべての進歩を経て、なでしこたちはどのようなプレーを見せてくれるのだろうか。

(文/早草紀子)