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女子サッカーレポート
絶対的な信頼を持ってもらえるように・・・〜岩清水梓の目指す場所〜(08.05.30)

 5月28日からベトナムで開催されているAFC女子アジアカップを戦っているなでしこジャパン。日本の攻撃を底から支えているのがDF陣だ。今回は池田浩美と並んで最終ラインを担う岩清水梓選手に話を聞いた。
 岩清水梓は2年前、マレーシアのKLFAスタジアムで悲痛な思いでピッチを後にした。FIFA U-20女子ワールドカップの出場権をかけて臨んだAFC U-19女子選手権。3位決定戦でオーストラリアに逆転され、敗北と同時に一度は掴みかけた世界への切符を目の前で逃してしまったのである。この大会の直後から岩清水はなでしこジャパンに招集されるようになる。最初はやはり戸惑いがあったという。
 「ラインの高さについていけませんでしたね、全くと言っていいほど。相手が(ラインを)出ちゃってから追いかけてる感じでした」と岩清水は当時を振り返る。しかしアメリカとの親善試合で豪快なヘッドでゴールを奪うと、その空中戦での得点力も武器に加え、その存在感を見せつけた。
 今ではすっかりレギュラーに定着し、冷静かつ大胆な守備で最終ラインに立ちはだかる岩清水だが、本人の感覚としては「大事なところで使ってもらっているという意識はありますが、定着っていう安心感は持ってないですし、まだまだだなといつも考えさせられます」と意外な答えが返ってきた。その一番の理由は「池田浩美(旧姓、磯ア)」の存在である。
 「何て言えばいいのか・・・みんなが絶対的な信頼を寄せてるんですよね、磯さん(池田)には。私も磯さんがいるから安心して突っ込んでいける部分が大きいんです。私はまだまだ磯さんの足もとにも及ばないですよ」そんな岩清水だが、2月の東アジア選手権では体調不良の池田に変わって最終ラインをまとめる大役を見事に果たしている。
 「磯さんがいないので自分がやるしかない。所属している日テレ・ベレーザでもセンターバックをやらせてもらっているんですが、声がけとかいつも以上に気にしてやってました。でも朝鮮民主主義人民共和国に逆転されたときは内心かなり焦りましたけど(笑)」
 ここまでくるには試練もあった。コンスタントに代表に招集されるようになっても、なかなか“なでしこジャパン”のスピードとラインコントロールをモノに出来なかった岩清水は、ただがむしゃらに試合を必死でこなしていた。当時の岩清水にとってみればプレー中に飛ぶ的確な池田の指示は、それは心強いものだったに違いない。
 「もう言われるがままでしたね(笑)。ラインを上げろといわれれば上げて、戻れと言われれば戻るみたいな。自分で判断が出来てなかった。余裕がなかったんです。そんな中でも2006年のドーハでやったアジア大会(日本は準優勝)は楽しかった。考えるより先に本能でプレーしていたっていうか・・・。しっかりと自分で“掴んだ”と実感したのは昨年9月に行われたFIFA女子ワールドカップ前あたりですね。・・・最近でしょ?」そう言って岩清水は笑う。いろいろな実践を経て今思う彼女自身の課題とはなんなのだろうか。
 「1-1で負けない、抜かれない強さですかね。基本ですが、世界大会などでは結局その部分が重要になってきますから」。
 現在、日本はAFCアジアカップの初戦で韓国に敗戦し、厳しい戦いに直面している。残り2連勝しても相手の結果次第では決勝トーナメント進出の行方が危ぶまれる状況だ。しかし、岩清水には立ち止まったり振り返ったりしている時間はない。まだ戦わなければいけない、倒さなければいけない相手がいる。
 「なでしこジャパンになってから、私まだオーストラリアを戦ってないんですよ。あれ(AFC U-19女子選手権)以来の対戦ですから。借りは返さないと!」
 こんな厳しい状況だからこそ、成長の幅もさらに広がるに違いない。スタートのつまずきをはね除けて日本らしさがよみがえったとき、チームメイトから岩清水に寄せられる“絶対的な安心感”はこれまで以上に増していることだろう。

(文/早草紀子)

※AFC 女子アジアカップ ベトナム2008の詳細は、こちら