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女子サッカーレポート
AFC女子アジアカップで得た収穫と課題〜テンポとセーブ、状況に応じた戦いを〜(08.06.13)

 AFC女子アジアカップを3位で終えたなでしこジャパン。一戦一戦を戦う中で、課題を修正し、状況に応じた戦いを身につけた日本。様々な動きがあった今大会を総括する。
 5月28日〜6月8日の日程で行われていたAFC女子アジアカップ。2月の東アジア選手権で初のタイトルを掴んだなでしこジャパンにとってこの大会は2つ目のタイトル、そして初のアジア制覇の夢がかかっていた。
 「東アジア選手権の優勝はウソじゃないって証明したい」。現地で澤穂希は常にこの言葉を口にしていた。誰もが同じ気持ちでいたはずだ。ベトナム入りしてまず感じたのは暑さとスコールの多さ、そしてピッチの悪さ。そんな中でもなでしこジャパンの調整は順調そのものに見えた。
 初戦の相手は韓国。ここ5年、負けなしの相手だ。第1試合途中から激しい豪雨が襲う。日本の第2試合までに雨は止んだものの十分すぎる程ピッチは水分を含んでしまった。スタジアムでの練習を許されずに臨んだこの試合、早めにピッチに順応した韓国に対し、日本の対応は遅れる。これがルーズボールを奪われ続けた一つの要因となり、日本は初戦を落としてしまう。確かに不測の出来事も多かった。しかし、一番の原因は“油断”ではなかっただろうか。まさかの敗戦で一転、決勝トーナメント進出すら危うい立場に立たされた日本。結果、皮肉にもこの敗戦によってなでしこジャパンは大きく成長するのだが・・・。
 続くチャイニーズ・タイペイ戦。かねてからの構想通り、佐々木則夫監督は安藤梢のみを残し、“Bチーム”を起用した。
 この試合に臨む選手たちは十分過ぎるほどわかっていた。勝利はもちろんのことだが、今後を考えれば大量得点を取って得失点で差をつけておく必要があること、そして代表の中でのプレーという点で北京オリンピックへの最後のアピールの場であること。
 プレッシャーがかかるゲームは、選手にとっても佐々木監督にとっても意味深いものとなった。この試合で日本は11-0と圧勝する。細かいミスはあったが、結果としては大いに評価できる一戦となった。
 決勝トーナメント進出には2点差以上という条件付きの勝利が必要となったオーストラリアとの試合。日本は完全に復活した。日本は3-1で勝利し、グループB1位で決勝トーナメント進出を決める。「仮にもアジアを代表してオリンピックに出場する日本が、グループステージ敗退ではアジアに対して失礼すぎる。そういうプレッシャーはありました」佐々木監督も振り返るようにプレッシャーの中で、敗戦からのこの立て直しは見事だった。これは今大会の収穫の一つと言えるだろう。
 準決勝の相手は中国。この試合で日本は重要な課題を見出すことになる。日本はここでも高い位置からのプレスと豊富な運動量で、序盤からハイペースでボールを追いかけた。しかし後半、足が止まってしまう。先制するも日本の弱点を巧みに突く中国に逆転負け。日本は、戦況に応じた戦い方を痛感することになった。スコアによって戦術を変える――日本はこれに弱い。何故なら日本はこれまで常にチャレンジャーだったから。どんな時でもがむしゃらに戦う。これがアジア、そして世界での日本の戦い方であり、実力だった。だが今は、違う。アジアの強豪相手にイニシアティブを取ることもできるのである。リードしている時、同点の時、ビハインドの時、経過時間、気温、ピッチコンディション・・・その時々に応じて戦い方が変わってくるのは当然のこと。ようやく、日本も流れに応じた戦い方を考える段階にきたということだ。
 準決勝で突きつけられた課題を日本は3位決定戦でしっかりと修正してきた。引くところは引く、出るところは出る――ライン設定をしての守備、そして持ち前のテンポ良い攻撃とのバランスを取りながら、再びオーストラリアを下して大会を3位で終えた。
 いつになく多くの波乱が起きた大会だった。決定力不足やセットプレーでの守備、サイドのケアなど課題は残る。しかしメンタル面、フィジカル面、そして戦術面すべてにおいて限界からの挑戦ができたこと、そして大会中に手応えを見いだせたことは北京に向けて大きな収穫となった。「結果は3位だったけどいい大会だった」。池田浩美の言葉にも素直に頷ける。この時期に行われた国際大会での5連戦だからこそ得られた成果と課題。予想以上に実りある大会となった。

(文/早草紀子)