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日本代表始動〜“岡田流”の指導に期待〜(08.01.25)

 今月15日から鹿児島県指宿市でトレーニングキャンプを行ってきた日本代表は明日、キリンチャレンジカップでチリ代表と戦います。その後、30日にボスニア・ヘルツェゴビナと対戦し、2月6日にはいよいよFIFAワールドカップ アジア3次予選の初戦でタイ代表との試合に臨みます。
 今日は、川淵キャプテンが、岡田監督、そして日本代表チームへの期待を語ります。

オシム前監督、日本代表戦を観戦か

 一昨日、オシム前監督のお見舞いに行ってきました。年末に会ったときよりも血色が良く、元気な姿を見ることができました。
 左半身に麻痺があるので、私の想像では、少し足を引きずりながら一歩一歩慎重に歩く感じなのかなと思っていたんですが、結構支障なく歩いているので、ビックリしました。最初はステッキを使って、その後、ステッキを持たずに歩いたのですが、意外とスタスタ歩くんですよ。リハビリが順調に進んでいることが見て取れ、お医者さんは、スポーツをしていたから足腰が丈夫なのかわからないが、ともかく本人の体力や気力がいい結果をもたらしていると話していました。
 さて、30日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦ですが、オシムさんの母国との試合で、しかもオシムさんの希望もあってマッチメイクが実現したゲームですから、生で見たいのが本心というもの。しかし、自分がスタジアムに行くことで日本代表に迷惑がかかるのではないかと、心配していました。日本代表が主役であり、自分が目立ってしまうのは本意ではない。それに、まるで前監督が今の日本代表チームを監視したり、評価するみたいで感じが良くないし、選手に変なプレッシャーを与えることにもなりかねないと・・・。そう言っているわりに「ネクタイしていった方がいいのかな」なんてことも言っていましたけどね(笑)。
 オシムさんとしては、行くとしたらこっそり会場に行き、もし、メディアやファンに見つかったら「川淵キャプテンに来てほしいと言われたから(渋々)来たんだ」と言い訳をするつもりでいたようです。「でも新聞にあんなに大きく出ちゃったからな」と、苦笑いしていました。
 「ともかく、ファンも心配しているし、オシムさんの元気な姿を見たら、みんな安心するから、ドクターの許可が得られれば、是非スタジアムに来て見てくださいよ」と、お願いしておきました。昨日の話では、30日の観戦にあたっては、ドクターが帯同する必要もなさそうで、協会職員がサポートし、会場では万全の態勢をしいてオシムさんを迎えたいと思っています。
 この日、リハビリの合間を縫って、20〜30分ほど話したんですが、オシム節は健在。「選手は期待していたほど成長していない」、「もっと責任を持ってプレーするべきだ」、「成長する可能性があるにもかかわらず伸びていない」、「選ばれたことに満足せず、もっと自分の能力を磨くべきだ」とか、堰を切ったように出てきました。しかも、「マスコミは選手を持ち上げたかと思うと、急にこき下ろしたりする。メディアももっと勉強しなきゃダメだ」なんて、メディアにまで注文をつけていた。なんだか、私が説教されている気分になってしまいました(笑)。もし、30日にスタジアムに来られたら、ファンの皆さんに一言二言、話してほしいと思い、そんなことを言うと「何をしゃべればいいんだ」なんて、言っていました。ファンの皆さんも、オシムさんの元気な姿を見られるのを楽しみにしていて下さい。
 さて、日本代表は、26日、30日に行われるキリンチャレンジカップを戦った後、2月6日からいよいよFIFAワールドカップ アジア3次予選に臨みます。
 初戦はタイ。FIFAランキングでは107位で、楽勝できると思っている方も多いでしょうが、サッカーは何が起こるかわからないスポーツですからね。99%押していても、最後の最後でゴールを決められて逆転されるということがありますから、油断して足元をすくわれないよう、必勝の構えで戦わなければなりません。この試合で勝利し、幸先の良いスタートを切りたいですね。
 アジア3次予選は、タイ戦の後、3月にアウェイでバーレーンと、6月2日、7日にそれぞれホーム、アウェイでオマーンと戦い、その1週間後の14日にはタイとのアウェイ戦、22日にホームでバーレーンと対戦します。バーレーン、オマーンともに、南米やアフリカの強豪国などから選手を帰化させて補強していますから、全く違うチームになっている可能性がある。しっかり情報収集をして、戦いに備えたいと思います。

岡田監督の思い切った人材登用

 さて、ご存知の通り、日本代表のコーチにヴァンフォーレ甲府前監督の大木武氏が加わりました。大木コーチの登用については12月の時点で技術委員会から聞いていたのですが、その時は岡田と大木が親しくて、いろんな情報を共有しているからだと思っていたんです。しかし、聞いてみるとあまり面識がないという。岡田は随分、思い切ったことをするんだなと驚きました。抜擢の理由を聞いてみると、岡田監督が「自分にないものを持っているから」と・・・。「さすが、岡田」とあらためて思いましたね。
 昨年4月27日付のこのコラムでも書きましたが、私も早い段階から甲府のサッカーに非常に関心をもっていたんです。非常に面白いサッカーをしていたんですよ。今でこそ、オシムさんが言っていた「ボールと人が動くサッカー」が日本のスタンダードになりつつありますが、甲府はそのサッカーをJリーグで実践していた数少ないチームの一つだったんですね。小野技術委員長にも甲府が面白いサッカーをしているから、一度見に行ってみたらどうかと言ったくらい。取り立てて目立つ選手もいない中で、選手全員が大木監督(当時)の意図する攻撃の組み立て方をよく理解し、しかも、それをちゃんと実践していたことに感服しました。とはいっても、時にこてんぱんに負けたりするんですけどね。しかし、それでもその戦い方を変えないところに、見ていて清々しさを感じたし、実に楽しいサッカーなんですよ。得点力のある選手がいたらJ2に降格することはなかったと思うので、その点は残念。あの攻めのサッカーでJ1リーグに新風を吹き込んでほしかったですね。
 思い切った人材の登用というのは企業でもあることです。事を成すには、集まった人間がみんな仲良しで和気藹々では成就しないもの。もちろん、根底の考え方、理念は同じでなければならないのですが、それを達成する手法はいくつかあり、違ったタイプの人材を入れることで、様々な面で新しいアイデアや刺激が生まれてくるものなんです。
 1991年にJリーグが設立され、私をトップに、専務理事に森健児と小倉純二(現JFA専務理事)が、常務理事に木之本興三の3人が就いた。小倉は92年にJFAの専務理事に就任し、そちらを専任するんですが、3人とも私にないものを持っていましたので、いろんな分野で重用しました。森はきめ細かいところがあり、総務的な仕事が得意だったし、木之本は“行け行けドンドン”っていうか、猪突猛進なタイプで、プロモーションやマーチャンダイジングなどに手腕を発揮した。小倉は思慮深く、バランス感覚に長けているタイプ。現在、FIFA理事も務めていますが、ソフトな感じのジェントルマンで、柔和な人柄が諸外国の要人たちに親しみを持たれています。
 組織というのは、理念や方針自体を第一義にして成長していくべきで、人間関係は、大人ですからね、あとからでも構築できる。もし、理解し合えず、組織が崩れたとしたら、それは方法論が大したことがないという言い方もできるわけで・・・。組織としての決断は、トップが全責任を負ってしなければならないんだけれども、色々な意見が活発に議論されたり、トップにきちんと意見を進言できるスタッフが大勢いる方が組織は成長するし、トップにとっても得なんですよね。
 サッカーの監督となると、コーチを自分の片腕として重用するタイプと、コーチを選手側に置いておいて自ら取り仕切るタイプの二通りあると思います。1970年代のドイツ、ヨーロッパを代表する名将、バイス・バイラー監督(FCバルセロナや1FCケルンの監督を務めた)をご存知でしょうか。彼は、細かい戦術や指導はすべて自分で行い、戦術面のコーチを置かなかったんです。
 岡田監督は、自分流のサッカーを浸透させつつ、いろいろな局面で大木たちコーチ陣の意見を取り入れていくんでしょうね。とにかく、今回の岡田の考え方とか判断は一つ飛びぬけているし、今までの日本人監督にはないところを持っている。選手の理解の浸透度もあるし、練習や試合を重ねるごとに、徐々に“岡田流”が表れてくるでしょう。これからの進化が楽しみですね。

 さあ、明日はいよいよ岡田監督の初陣。2010年に向けて新しいユニフォームも出来上がり、明日の試合でお披露目となります。今回のユニフォームは、「Fabric X」というテクノロジーが搭載されているのですが、これは日本のユニフォームだけに使われているものなんです。その軽さに選手らも驚いていましたから、ユニフォームが戦力の一つになるかもしれない。新生ジャパンがどんなゲームを見せてくれるか――乞うご期待、です。

財団法人 日本サッカー協会
キャプテン  川淵 三郎
2008年1月25日