JFAインターナショナルコーチングコース

われわれナショナルトレセンコーチも事前に十分に準備をして講義や実技の講師を担当しました。しかし、まだまだわれわれの英語の力は十分であるとは言えず、受講者を相当混乱させてしまったと反省しています。それにもかかわらず、常に明るく、そして少しでも日本のやり方や考え方を理解しようと努めてくれていたのが印象的でした。彼らのこのような積極性が講習会全体の質を高めてくれたと思います。
シリアから参加した受講者は日本での約6年間の生活経験があり、日本語がとても上手で、シリアサッカー協会のアカデミーの日本人コーチの通訳をしています。彼のおかげで今回は中東の国々からの参加者とはこれまでになくスムーズなコミュニケーションをとることができました。私が担当した指導実践では、細かいところでうまく英語で説明できなかった点を、私が日本語で話し、それを彼がアラビア語に訳し、さらにそれを英語が流暢な中東の参加者が英語へ訳すといった、まさにインターナショナルコーチング! すごい状況がありました。
11時間の実技、6時間の指導実践は身体的に非常に厳しいものであったと思います。20歳代の若い参加者はなんとかなっていたようですが、最高齢であった62歳のイランからの参加者は、ほとんどすべてのセッションで休むことなく動き続けていました。また国際試合を経験したこともある実技レベルの高い参加者が手を抜くことなくプレーしてくれたことによって、締まりのある実技のセッションであったと思います。ゲームや競争になると何としてでも勝とうと必死になる姿や心から、サッカーを楽しんでいることが見て取ることができました。これまでのインターナショナルコーチングコースでもすでに何度も経験していますが、特に中東からの参加者が自然に見せるゲームや競争での勝ちへのこだわり、さまざまな駆け引きには、今回もまた感心させられました。ゲームで見せるコーチたちの姿が、そのままその国のサッカーのスタイルであるように感じました。
ゴールを目指す(原田貴志)
原田貴志講師による「ゴールを目指す(突破)」。事前の説明はすべて英語で行われた。
ウォーミングアップも兼ねて、20m四方ほどのグリッドの中でドリブル。不意に原田氏から「Look around!」(周りを見て!)との声が響く。その一言で混沌としていた空気が引き締まった。その後、緩急を付けるドリブルなどを行ったのち、3カ所から順番にドリブルしてくる相手を、一人のディフェンダーが順番に対応する、という練習に入った。フェイントを使ってディフェンダーを抜く選手はもちろん、ポジショニングで一気にかわす受講者にも拍手が送られる。真正面に抜けなくても、機転を利かせて抜ければそれはそれで評価する、という姿勢が見られた。
ボールを奪う(山橋貴史)
山橋貴史講師による「ボールを奪う」。2人一組になり、手の届く距離を保ちつつサイドステップを繰り返す受講者たち。意外と苦戦していたのがスライディングの練習だった。天然芝や人工芝があれば習得は簡単だが、土のグラウンドではなかなかスライディングの練習はやりにくい。アジア各国の練習環境を物語っているともいえる風景だった。
切り替えを意味する「transition!」という言葉が連呼される中、ボールを失った直後の守備に力点が置かれた練習が続けられる。参加者たちは声を掛け合いながら、実習に取り組んでいた。
予定されていたカリキュラムが終了し、最後に山橋講師から「U-12の世代は、ゴールを守ることも大事だが、ボールを奪うのも同じくらい大事だ」との発言がなされ、山橋講師が行った指導が「ボールを奪う」をテーマにしていたことが告げられる。そうすると受講者の間から質問の声が上がった。
「練習の意味はどのタイミングで教えればいいのでしょうか?」
その質問を皮切りに活発に意見が飛び交う。「指導前がいいのでは?」「いや、気付かせてからの方がいい」。それぞれの意見が収束したタイミングで「ミニゲームの中で気付かせる方がいいが、ケースバイケースである」旨が伝えられた。
国内の講習会の場合、そこで納得して終わる場合が多いそうだが、彼らは違う。疑問点を率直に山橋講師にぶつけ、英語に母国語を交え、周りの参加者を巻きこんだ議論が始まった。そんな活発な意見の交換からも、受講者の貪欲な姿勢が現れていた。