JFA|日本サッカー協会  Japan Football Association
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「芝生で語ろう」


既に土台はできている

 アメリカのサブプライムローン問題をきっかけに起こった世界金融危機は、日本経済にも大きな影響を及ぼしています。それに追い打ちをかけるようにデフレによる景気悪化が深刻化しており、日本全体が元気や自信をなくしています。ですから、どうしても将来に希望が持てず、後ろ向きになりがちですね。
  日本が立候補している2018/2022FIFAワールドカップ招致に関しても、自治体は財政難で招致に消極的だとか、スタジアム改修にかかる費用のねん出を負担に思っているとか・・・多くのメディアの論調は悲観的で、悲観論を前提にした取材が僕のところにも多く来ています。だけど今の不況って、この先10年、20年と続くんでしょうか?
  それに、考えてみてください。日本が2002年大会招致に正式に立候補したのは1989年。プロリーグも構想段階で、プロサッカーを立ち上げて成功するかどうかも全く分からない状態だった。しかも4万人以上収容(決勝戦は6万人以上)の、客席の2/3が屋根で覆われたワールドカップ仕様のスタジアムなんて一つもなかったんですよ。つまり、2002年大会は10以上もの競技場を新たに建設するか、多額の費用をかけて既存のスタジアムを大改修しなければならなかったわけです。その時に比べたら、今は、決勝戦の会場の条件となっている「8万人以上収容のスタジアム」がないだけ。大型映像の設置など新たな条件が追加されていますが、いずれにしろ、今度は単独開催ですからゲーム数は2002年大会の倍になるんですよ。既にJリーグはありますから、ワールドカップ後はJクラブが有効に利用することができます。スタジアムが大きくなれば、クラブも集客をにらんで大物選手の獲得という投資だってでき、いろいろな可能性が広がるわけです。そもそもJリーグのファンのために改善していくことは、ワールドカップとは関係なく重要で、それが2018年、2022年に生きていくんですからね。今後のスポーツの発展のためにも不可欠なことなんです。
  スタジアム改修などについて財政負担を危惧する声は多くありますが、ワールドカップについて言えば、施設によってスペックは異なりますし、極力支出を抑える工夫だってできるでしょう。それに、そもそも何万人もの観衆の入場料収入をはじめ、様々な経済効果などもちゃんと計算しているんでしょうか。もちろん、サッカー協会として各自治体の話を聞き、一緒にその対処を考えたいとは思っていますが、地域の発展やスポーツ振興、住民の生き甲斐づくりといった息の長いプロジェクトとして、大局的に、前向きにとらえてほしいと思っています

開催地13、キャンプ地64カ所が立候補

 今回、ワールドカップ招致を正式に申請した自治体は、開催地が12(スタジアム数は13)、キャンプ地が64です。今後も増える可能性はありますが、FIFAが提示するよりも多くの自治体が招致に前向きな姿勢を示してくれたことは僕らにとっても大きな励みになります。
  2002年大会の時は15の自治体が開催地に名乗りを挙げましたので、それと比べたら少し減りはしました。理由は分かりませんが、中には、昨今の経済情勢を見て招致を諦めた自治体もあるでしょう。それも一つの考えで、立候補しなかったから悪いとかいいとか言うつもりありません。だけど、少なくとも僕は―生まれは埼玉県、現在は東京に住んでいますが―ワールドカップの日本招致に向けて立候補してくれた地域に住んでいて良かったなと思うんです。

日本が、世界を一つにする

 今回、立候補した自治体の多くが2002年大会を経験したところで、ワールドカップの素晴らしさやその価値をよく知る、ポテンシャルのあるところだと言えます。
  ワールドカップを見に世界中から大勢の人々が日本を訪れ、開催地やキャンプ地の街はお祭りのように活況を呈す。海外との触れ合いが少ない島国の日本人が、名前も知らなかった国を知り、市井の一人ひとりが"国際親善"というものを経験する。大会が終わった後も末永く海外の人々と交流を温めていく。世界トップレベルのサッカーを目の当たりにし、サッカーに目覚めて新たな生き甲斐を見出す。子どもたちがサッカーやスポーツに関心を持ち、大きな夢を育みながら元気にたくましく成長していく――。2002年大会では、多くの人々がワールドカップを介して生まれる様々なドラマを体験しました。それは、日本人に限らず海外の人々も同様で、今も多くの人々の心に新鮮に刻まれているはずです。
  スタジアムやインフラの整備に数億円のお金がかかったとしても、ワールドカップ招致を、そういった地域の活性化や国際親善、つまり、未来への投資として有効なものと見るかどうか・・・。それに尽きるのではないかと思っています。
  2002年大会は共催によって開催地もキャンプ地も半減したわけですが、にもかかわらず、世界は日本のワールドカップを高く評価してくれました。差別や偏見のない日本人の国民性や日本らしいおもてなしの精神、治安の良さや、大会の組織力・運営力も日本が誇るべきものとして、世界中の人々の知るところになりました。対戦国のユニフォームを着た日本人が大挙してその国の試合の応援に行くなんて、それまでのワールドカップでは見られなかった光景ですからね。これには世界各国の人々が驚き、大きな感動を味わいました。
  今回、"招致アンバサダー"に就いたオシム前日本代表監督やトルシエ元監督、ジーコ元監督、名古屋グランパスのストイコビッチ監督、そして、僕の敬愛するブッフバルト氏、海外のトップリーグでプレーする中村俊輔、長谷部誠両選手ら、みんなが異口同音に、日本の素晴らしさや、日本がワールドカップを開催するにふさわしい国であることを声高らかに言ってくれています。
  つまり、2002年大会がそうだったように、"世界が一つになるワールドカップ"を実現できるのは日本だけだと思うんです。投票権を持つFIFA理事の皆さんは2002年大会を経験した人がほとんどですので、今後も日本らしさを強調し、もっともっと理解者を増やしていきたいと考えています。
  2018年、2022年というと、今の小学生や中学生などのユース選手がその舞台に立つわけです。各地でプレーする少年たちはそのワールドカップに夢を託し、具体的な目標を持って一生懸命サッカーに打ち込むことでしょう。
  ワールドカップは未来に夢をつなぐもの――。我々もそのために全力をつくしていきますので、サッカーファミリーの皆さんもワールドカップの機運を盛り上げるよう、是非、ご協力ください。