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国際交流・支援活動

【海外赴任レポート】 マカオ 影山 雅永さん 2007年5月

【プロフィール】

影山 雅永(かげやま・まさなが)

1967年5月23日 福島県生まれ
筑波大学卒業後、当時のJSL、古河電気工業を経てJEF United市原(現千葉)、 浦和レッズ、ブランメル仙台(現ベガルタ)でプロサッカー選手生活を過ごす。その後、筑波大大学院体育研究科修了、 ドイツ留学を経て、サンフレッチェ広島トップチームコーチ。昨年からマカオ代表監督(A代表、U-18代表監督)兼テクニカルチーフ。


~派遣国・地域の紹介 : マカオ~
永らくポルトガルの支配下にあったが1999年に中国に返還。国土は27.3平方キロメートル(東京都世田谷区の約1/2)。 人口:約461,100人(2004年3月末現在)。観光およびカジノ産業が大きな地位を占める(GDPの約4割、政府歳入の約7割)。
(※以上、外務省HPより)FIFAランキングは190位(2007年4月現在)。


1.はじめに

 香港への旅行の際にオプションツアーとしてついていた感の否めないマカオですが、 昨年は旅行者総数の伸び率が日本では1位となり、その数が近年香港と肩を並べるまでになっているそうです。 そんなマカオで代表チームの指揮を取り始めて1年、テクニカルチーフとしての仕事も含め、 強化全体の責任を任されています。1999年に中国に返還されて以来、多くのポルトガル人が本国へ帰国し、 ローカルの人々によってのサッカーの建て直しを始めたマカオにおいて、現JFA女子委員長の上田栄治氏、 現徳島ヴォルティス監督の今井雅隆氏の2人の元日本人監督の大きな尽力が語られることは珍しくありません。 その後、1年ほどのブランクを経て昨年3月に私のマカオでの仕事が始まりました。

2.選手たちは完全なアマチュア

 代表チームですからFIFAワールドカップの予選はもちろん、AFCアジアカップ、アジア大会、東アジア大会など 主要大会へひとつの国(マカオの場合は自治区)の代表として参加するわけですが、 選手のレベルとしては非常に厳しいものがあり、強化も思うように進まない現状があります。
 選手たちは完全なるアマチュアで、私の選んでいる選手たちも教員、銀行員、政府職員、 学生とさまざまで、マカオらしいのはカジノで働く者も数人いるところでしょう。 彼らにとってサッカーは生活におけるプライオリティーが一番ではないため、 仕事によってトレーニングに来られない者、試験があって来られない者、中には家族の誕生日パーティーがあるため トレーニングに来られないと言う者も出てきます。昨年のドーハアジア大会への登録選手を選抜したときには、 1人の選手が「その期間は歯医者の予約を入れているので行くことはできない」と言ってきたことが衝撃的でした。
 その反面、マカオの選手たちはもっと上手な選手になりたい、チームとしてレベルをあげ、 試合に勝ちたいというモティベーションを高く持っている選手が多く、ピッチ上での役割を与えるとそれを 忠実に行おうとする精神を持っていることが挙げられます。 前述したプライオリティーの低さ、プラスこのマカオ人のメンタリティー、この2つをどのように関連させ、 選手たちのサッカーへのモティベーションに変えていくのか。代表選手なのだからトレーニング、ゲームに参加するのは 義務だ、と言うのは簡単ですが、逆に代表選手に選ばれることが煩わしくなり、 それを拒否する選手が実在するわけです。代表選手になることの誇りや意義、そしてトレーニングやゲームに参加することに よって得られる上達や充実。これらを複合的に考えてバランスをとり、選手たちを刺激していくことが必要であると認識しています。

3.マカオ全体のサッカーレベルを上げる

 今年2年目にあたって、最も力を注いでいるのが、マカオサッカー全体のサッカーレベルを いかに上げていくかと言うことです。代表チームは私が去れば後に残るものは少ないですが、 マカオのサッカー界として今後に残せるものは何か?それは日本で行われているものと同じで若手の育成であり、 指導者の養成であると考えます。幸い、マカオは非常に小さな国ですので、U-13、U-15、U-18、U-21、代表チーム、 これらをひとつのクラブのように、ひとつの共通したヴィジョンの基で育成、強化していくことができつつあります。
 各代表チームは現在週3回(2回のサッカートレーニングと1回のフィジカルトレーニング)を行っていますが、 これらを各チームのローカルコーチングスタッフたちとともに具体的なトレーニング方法をディスカッションし、 方向性を示しながら進めているところです。もちろんローカルコーチたちもコーチの仕事はパートタイムですし、 マカオにおいてサッカーピッチは政府管理下の3つしかないのですから困難は極めますが…。
 JFAのアジア貢献として発展途上国への指導者派遣という活動ですが、私にとっては日本以外の国で自分の力を試せる、 そして代表監督とテクニカルチーフという責任のある任務は貴重な経験であり、楽しく行っています。 違う国で、その地の文化に理解を示しながらも、強化するために必要なものは選手や地元協会に対して厳しく要求し、 戦うところは戦う。この相反するベクトルの中で自分なりのベストな選択をしていく作業。 これってオフ・ザ・ボールの1対1で裏は取られないようにしながらも、ボールを奪うためにベストを尽くす、 プライオリティーの高いインターセプトにチャレンジする、というプレーに似ていると思うのは私だけでしょうか?