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国際交流・支援活動

【海外赴任レポート】 シンガポール 古賀 琢磨さん 2012年5月

【プロフィール】

古賀 琢磨(こが・たくま)

1969年4月30日生まれ。静岡県出身。
中学校時代は、U-16日本代表にも選ばれた。高校時代は静岡県立清水東高校でプレーし、順天堂大学に進学。サッカー部に所属する。卒業後、当時JFLのヤマハ発動機サッカー部(現ジュビロ磐田)に所属し、15試合出場で2得点。その後、1993年〜1999年にジュビロ磐田(179試合出場/4得点)、2000年~2002年に清水エスパルス(52試合出場)、2003年にセレッソ大阪(16試合出場)で選手として活躍。J1リーグ戦、通算233試合出場で4得点を記録した。引退後、指導者としてセレッソ大阪西U-15コーチ兼サッカースクールコーチ、桃山学院大学サッカー部コーチ、セレッソ大阪U-15監督、セレッソ大阪西U-15監督を歴任。2011年4月にシンガポールに派遣され、U-16/17シンガポール代表を率いる。2006年に公認S級コーチライセンスを取得。


~派遣国・地域の紹介 : シンガポール共和国~
東南アジアに位置し、マレーシアと接する。面積は710 平方km(東京23 区とほぼ同じ)で、人口は約508 万人(うちシンガポール人・永住者は377 万人)。国語はマレー語で、公用語として英語、中国語、マレー語、タミール語が使われている。民族の75%が中華系で、マレー系(14%)、インド系(9%)、その他(2%)と続く(以上、外務省ホームページを参考)。
FIFA ランキング:158 位(2012 年5 月9 日発表時点)

はじめに

 2008年に影山雅永氏(現ファジアーノ岡山監督)が赴任して以来、2回目(2人目)のシンガポール指導者派遣になります。2011年4月にシンガポールサッカー協会(FAS)とJFA間でパートナーシップ契約を結びました。私がこちらに赴任したのが昨年4月19日、あっという間に1年が経ち、2年目のシンガポール生活を迎えるところです。昨年U-16シンガポール代表を率い、今年は持ち上がりでU-17シンガポール代表を指導させてもらっています。
 それではシンガポールの国、民族、そしてサッカーの話をしたいと思います。

シンガポール

 1998年のFIFAワールドカップフランス大会に向けたアジア最終予選、日本代表の“野人”こと岡野雅行選手が劇的なVゴールを決めたジョホールバルは、シンガポールの隣に位置するマレーシアです。シンガポールの面積は、東京23区とほぼ同じ大きさで、その狭い国土におよそ518万人が住み、人口密度は世界第2位と言われています。人種は、華僑(中国)系7割、マレー系1割、インド系1割、移住・その他(ヨーロピアン)1割の比率になっています。これがサッカーになると、マレー系7割、インド系1割、その他(ヨーロピアン)1割、華僑(中国)系1割になります。
 また、シンガポール国内は極端な学歴社会で、とにもかくにも勉強が一番という風潮がとても強いです(後述しますが、これがサッカーに多大な影響を与えています) 。宗教は、キリスト教、ムスリムのイスラム教、ヒンズー教、仏教と人種同様、多種の宗教があります。

Football Association of Singapole

 私の働いているFASについてお話しします。
 FASは規模が小さいですが、5つほどの部署があり、その一つがアカデミーと呼ばれるユース育成部署で、NFA(National Football AcademyのU-15〜U-18代表チームがあり、U-17代表が私のチームになります。
 私のチームを紹介させていただく前に、U-8〜U-12(グラスルーツ、普及)、U-13〜U-18(学校単位のサッカー&プロクラブチーム下部組織)について簡単に触れたいと思います。
 サッカーはシンガポール国内で最も人気のあるスポーツですが、グラスルーツ、普及はおろそかにされてきた感が否めません。昨年まで国内3カ所でJr,COE(日本のナショナルトレセンにあたる)U-8・10・12を行っていましたが、十分ではありませんでした。そこで2012年度から国内10カ所に拡大し、各センター60名(各カテゴリーU-8・10・12、それぞれ20名)、総勢600名の未来の代表選手が毎週土曜日に汗を流しています。
 また、U-13〜U-18では、U-13〜U-16の学校対抗のトーナメント戦、プロクラブチーム下部組織のU-18・16・14の各カテゴリーで年間を通したリーグ戦を行っており、U-12に比べると環境は整っていると思います。

U-17 シンガポール代表(National Football Academy)

 私が指導しているU-17代表チームについて紹介します。選手総勢23名(GK3名、フィールドプレーヤー20名)、Race(人種)の内訳は、マレー系13名、インド系2名、華僑(中国)系6名、その他(ヨーロピアン)2名となっており、さまざまな学校に通っています。Secondary School(日本の中学、高校)12名、ITE(技術系専門学校)5名、Polytechnic(高等専門学校)5名、インターナショナルスクール1名となっています。このうちSecondary Schoolに 通っている選手たちは、10・11月にO-Levelという国家試験を受験しなくてはなりません。この試験はとても大事な試験で、おそらく7月頃から準備を始めるので、練習にはほとんど来なくなるでしょう。今現在でも学校のエクストラクラス、個人レッスンの授業があると言って、練習を休む状態ですか……。
 勉強一番のお国柄はサッカー選手でも変わらないので、理解しつつ選手の出席率を気にしながら毎日の練習を行っています。U-17代表チームといっても、クラブチームの下部組織をイメージしてもらえれば良いと思います。なにしろ国が狭いので、練習会場に来るまでにかかる時間が一番遠い選手でも1時間半(バス、電車を利用)なので、毎日練習することが可能です。
 週間スケジュールは下記のようになります。土曜日の公式戦は「PRIME LEAGUE」という、日本でのサテライトリーグ(23歳以下)に、われわれNFA U-17とU-18の2チームが参加させてもらっています。年上のチームと対戦することにより、試合から多くのことを学んでいます。
 このチームの目標は2013年10月下旬に行われるAFC U-19選手権1次予選です。そこに向けて、確実に個のスキルアップ、チームとしての完成度を高めていきたいと思います。

週間スケジュール

月曜日 19:00 トレーニング
火曜日 19:00 トレーニング
水曜日 18:00 ミーティング、ジム(筋力トレーニング)
木曜日 19:00 トレーニング
金曜日 19:00 トレーニング
土曜日 17:00 公式戦
日曜日 オフ

最後に

 現状のシンガポールにおけるサッカーのステータスは日本に比べるとまだまだですが、グラスルーツ、育成に力を入れており、プロリーグを持っている国ですので、土壌は整備されていると思います。
 国全体が学歴社会、また男性は18歳になるとナショナルサービスといって2年間の徴兵義務があり、サッカーとの両立が難しい期間もあります。しかし、何とかこの国のサッカーを良くしようと目標に向かって努力する情熱がFASにはあります。
 そして、個のポテンシャル(身体能力、スキル、しなやかさ)の高い選手がおり、可能性は大いにあると思います。その一部を自分が担っていることを思うと、責任の大きさと、その仕事に携われる喜びを感じています。海外に飛び出し、異国の文化に触れ、新しい友人と出会う、サッカーを通じて、この場にいられることを感謝したいと思います。
 20年後にはシンガポールが日本と肩を並べ、アジアのトップになっていることを願って……。