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国際交流・支援活動

【海外赴任レポート】 チャイニーズ・タイペイ 黒田 和生さん 2013年11月

【プロフィール】

黒田 和生(くろだ・かずお)

1949年3月8日生まれ。岡山県倉敷市出身。
岡山県立倉敷青陵高校を卒業後、東京教育大学に進学し、選手としてプレー。その後、神戸FCコーチに就任し、同クラブの監督も務める。滝川第二高校の監督を経て、2007年にヴィッセル神戸の普及育成事業本部長に就任。2009年からはユース(U-18)監督も兼任した。2012年にチャイニーズ・タイペイへ渡り、ユース育成統括/U-13・18代表監督として、現在も指導にあたっている。


~派遣国・地域の紹介 : チャイニーズ・タイペイ(台湾)~
面積は約3万6,000km2(九州よりやや小さい)で、人口は約2,332万人(2012年12月)。主要都市は台北、高雄で、言語は北京語、福建語、客家語などが使われている。宗教は仏教、道教、キリスト教など(以上、外務省ホームページなどを参考)。
FIFAランキング:176位(2013年10月17日発表時点)



 チャイニーズ・タイペイにも美しい四季があります。赴任以来、2度目の夏と秋を過ごしました。今では最も支那らしいと言われる、その風習や食事にもかなり慣れてきました。
 日本の統治があったり、中華民国になったり、歴史的にも政治的にも複雑な地域ですが、近年の経済成長は著しく、特に台北の街は超高層ビル「台北101」に代表されるように、近代的で明るく、清潔感があり、ファッショ ナブルで、治安が良くて人に優しい大都会に変貌しました。それに伴い、日本との交流も活発になり、観光客や留学生、修学旅行なども激増しています。また、2011年の東日本大震災の際、どこの国よりも早く手を差し伸べ、そして200億円以上の義援金を贈ってくれました。日本人はこのことを忘れてはいけません。
 さて、サッカーはと言うと、今は冬の時代です。“日本の40年前と同じ”と例えられますが、よく考えたらその頃を知っている人も少なくなってきました。つまり競技人口が少なく、代表チームも結果を出せず、メディアの取り上げも少ないということです。しかし、春の来ない冬はありません。希望の光があります。それは「台湾ユースリーグ(TYL)」です。TYLはチャイニーズ・タイペイサッカー協会(CTFA)が主催する育成年代の全国大会として、2012年から始まりました。1年目はU-10、U-12、女子の3カテゴリーでスタートし、2013年にはU-15、U-18も実施しました。ピッチの状況をはじめ、問題や課題等は数多くありますが、未来を感じます。
 私はU-18代表の監督が主な任務となっていますが、U-13、U-14年代の代表監督も務めました。また、指導者養成のお手伝いをしたり、U-12のエリート発掘プロジェクトで全国を回りました。おかげで多くのサッカー愛好者に出会いました。育成に携わっている方は、日本と同じで本当に情熱のある人が多いと感じました。
 親日的ということもありますが、日本のサッカーはとても尊敬されています。特になでしこジャパンが世界を相手に戦っている姿は、チャイニーズ・タイペイの人から見るとすごいことのようです。しかし、かつて女子サッカーではチャイニーズ・タイペイのほうが日本より強かったこともありました。昔のことを知っている人たちの情熱で、今、強化の力が女子に注がれつつあります。日本の指導者養成システムも見習っています。しかし、私は日本のまねではなく、チャイニーズ・タイペイの道をもっと考えるべきだと言い続けています。
 民族の特性、サッカーでの特徴としては、下記が挙げられます。

  1. 攻撃的。荒っぽい意味ではなく、前向きでゴールを目指す意欲が強い。中盤がない。サイドチェンジが少ない。
  2. 持久力がない。後半の終わりごろはバテて、動けなくなる試合が多い。
  3. 技術レベルは低い。パスの基本が徹底されていない。
  4. 守備の組織がない。相手のロングボールにはスイーパーシステムで対応する。
  5. 審判のジャッジには素直である。オフサイドの判定に文句を言ったり、手を広げている姿は見たことがない。まれに選手同士の小競り合いはある。

 中学、高校にクラブチームはなく、部活動のみです。体育班と言われる一部の限られた人間だけが競技をしています。文武両道といった概念は存在しません。したがって競技人口は少なく、高校でも部活動の数は30ほどです。学校体育の教材にもサッカーはありません。課題は山積みです。
 選手たちの姿勢は素直ですが、最初に見たときから「指示を待っている、やらされている」状態でした。自分の判断で動く習慣が少なく、コーチに言われてから動くので、そこを改善しなければいけないと思いました。あいさつの習慣がないことにも驚きました。早速、握手で始まるあいさつの習慣を取り入れましたが、これは好評です。彼らと出会う合宿や練習会は、たまらなく胸をわくわくさせます。彼らのおかげで、行ったことのなかった中国の北京や南京、マレーシアに行くことができました。
 今回の派遣で、「もう一度、指導の現場に立ちたい」という強い願望を日本サッカー協会がかなえてくれました。感謝しています。また、CTFAには有能な通訳をつけていただき、こちらも感謝しています。先日、マレーシアでAFC U-19選手権予選が行われました。ベトナム、オーストラリア、香港に敗れ、予選敗退となりましたが、選手たちは魂の入った試合を最後まで続けてくれ、大きな成長の跡を見せてくれました。試合が終わったときのロッカールームは、さながら冬の全国高校サッカー選手権大会の最後のロッカールームのようでした。春は近いと確信しています。大人が力を合わせて、取り組んでいかなければなりません。