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国際交流・支援活動

【海外赴任レポート】 ブータン 松山 博明さん 2010年11月

【プロフィール】

松山 博明(まつやま・ひろあき)

1967年8月31日生まれ。京都府京都市出身。
京都府立山城高校卒業後、早稲田大学に進学。大学卒業後は、古河電気工業サッカー部に入社、以後フジタ工業を経て湘南ベルマーレ、東芝、 コンサドーレ札幌でプレーした。
ジュニアユース代表、ユース代表、全国高校サッカー選手権大会得点王(1984年度)、全国高校サッカー選手権大会ベスト8の経歴を持ち、湘南 ベルマーレ時代にはJ1リーグ昇格、天皇杯全日本サッカー選手権大会優勝、3位などの成績を残した。
指導者としては、コンサドーレ札幌コーチから始まり、仙台育英学園高校監督、ベガルタ仙台ジュニアユース監督、 ヴィッセル神戸サテライト監督、ヴィッセル神戸監督代行、滝川第二高校コーチ、 大分トリニータでは強化担当、サテライト監督、 監督代行、コーチを歴任。2010年7月からブータン代表監督、アカデミーヘッドコーチを務める。
主な成績は、J1リーグ昇格(札幌)、高円宮杯全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会ベスト8(仙台育英高校)、 高円宮杯全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会3位(滝川第二高)、Jリーグヤマザキナビスコカップ優勝(大分)。


~派遣国・地域の紹介 : ブータン~
ブータン王国は、インドと中国に囲まれ、ヒマラヤ山脈南麓に位置する。北部と南部で国土の標高差があり、標高3,000m以上の北部はツンドラ気候、 標高1,200m から3,000m の中部のモンスーン気候、標高1,200m 未満の南部は亜熱帯性気候である。
面積は、約3万8 千平方km(日本の九州とほぼ同じ)。人口は約68万人。首都はティンプー。人種・民族はチベット系(約80%)、 ネパール系(約20%)ほか。宗教はチベット系仏教、ヒンズー教ほか。公用語はゾンカ語である(外務省ホームページより)

FIFA ランキングは198位(10月20日発表時点)

ブータン王国 Druk Yul(竜の国)Kingdom of Bhutan

 GNH(Gross National Happiness):国民総幸福量、ブータンを紹介するときに使う言葉ですが、 「あなたは幸せですか?」という問いに9 割以上の人が「はい」と答える国。国の幸福を国家の究極の目標とする国。それがブータンです。

 私は、その国に日本サッカー協会(JFA)のアジア貢献事業(JFA Dream Asia Project)の一環で、ブータン代表監督、 ブータンサッカー協会アカデミーヘッドコーチとして2010年7 月に派遣されました。まず、ブータンで生活する上で大切なことは、 文化や伝統、気候、生活様式、食事、そして言葉にうまく順応できるようになることだと考えました。 しかし、首都ティンプー市内は2,500m という高地のため、少し歩いただけでも息切れするくらいでした。食事もトウガラシを使った食材が多く、 体調をコントロールするのも大変でした。
 また、指導する上でも、ブータンでは首を横にかしげるしぐさが「はい」という意味ですが、 日本の「いいえ」のしぐさに似ていることから、間違って何回も説明してしまうこともありました。 さらに、空気が薄いためか、ボールの飛距離がいつも以上に伸びるので、コントロールに戸惑いました。

アカデミーヘッドコーチとしての現状

 アカデミーの選手は、セレクションで選ばれた約20 数名がユースホステルに宿泊し、学校に通いながら生活しています。 しかし、決して良い環境とは言えません。トレーニングは、ブータンサッカー協会が保有している唯一のグラウンドで行いますが、 しっかりと管理していないためか、いろいろな人がグラウンドを使用します。優先されるべきアカデミーの選手たちが、 トレーニングに集中できないときも度々あります。また、酷使されるグラウンドは土で、トレーニング中に牛や犬が横切ることもよくあります。

 指導するにあたって、日本と比べると、用具がほとんどそろっていません。 ボールは5 ~ 6 個しかなく、ビブスも2 色で数枚しかなく、コーンやマーカーも限られていました。 そこで、地形や建物をうまく利用しました。ロープを買ってきて、自前のラダーを作り、古い机を改良してミニゴールを作るなどして対応しました。 また、指導する上で、まずしっかりとした規律やルールをつくり、時間厳守や報告、連絡、相談を徹底させています。

 トレーニングでは、技術の習得が遅れているので、常にボールを使うメニューを取り入れ、みんなで一緒に行い、 助け合うメニューも多く取り入れました。また、毎週必ず1 回は、対外試合を組んでもらうように要請しました。 そのほかに、メンタル面でのケアも非常に大切に感じました。

代表チーム監督としての現状

 代表チームの選手は、サッカー協会のスタッフから推薦された50数名がリストアップされ、 3日間セレクションを行いました。その中から25 名のメンバーと5 名のバックアップメンバーを選考しました。
 選考された選手は、警察官、軍人、サッカー協会スタッフ、先生、銀行員、学生、無職などさまざまです。 トレーニングは、チャンリミタン競技場で行っています。主に基本的な技術、戦術の習得を目的とした指導をしています。 代表の選手たちは、指導者と選手との規律がしっかりしています。 前任の行徳浩二氏がしっかりとした基盤をつくってくれたので、非常にやりやすい環境ができています。

今後のブータンサッカーについて

 サッカーを取り巻く環境は、決して良くありません。施設や用具、指導者・ユース年代の育成を、今後積極的に行っていく必要性を感 じます。
 このように課題は山積みだと思いますが、9 割以上が幸せだと感じるのんびりとした国民性の国で、 選手のモチベーションを高め、サッカーを取り巻く環境を整えていくのは容易なことではありません。 国の発展と同様に、サッカーの発展も独自の進歩を遂げていくのかもしれません。