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国際交流・支援活動

【海外赴任レポート】 スリランカ 内藤 康介さん 2007年11月

【プロフィール】

内藤 康介(ないとう・こうすけ)

静岡県藤枝市出身。27歳。
大学在学中にJFA公認C級コーチライセンスを取得し、子どもたちを対象に指導ボランティアでサッカー指導。 大学卒業後に県内の高等学校で講師を勤め、サッカー部の顧問も兼務。青年海外協力隊試験に合格後、 2007年3月よりスリランカにて活動中である。任期は2009年3月まで。


~派遣国・地域の紹介 : スリランカ~
面積は6万5,607㎞2で国土の大半が熱帯モンスーン気候帯にある。首都はスリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ。人口は約1,937万人(2007年7月)で、 全人口の約70%がシンハラ人で、他にはタミル人(18%)、ムーア人(8%)など。公用語はシンハラ語とタミル語であるが、 共通言語として英語が広く用いられる。内藤氏の赴任地はカルタラで、主要都市コロンボから南へ40km(バスで約1時間30分) に位置する。カルタラ寺院が街のシンボルで、マンゴスチンの産地としても有名。地元には大きなサッカークラブが 4チームあり、週末に行われる試合には大勢の人たちがスタジアムに足を運ぶ。FIFAランキング:169位(2007年10月)。


1.きっかけ

 学生時代、ある東南アジアの国のスラム街を訪ねる機会があった。
 働く小学生といったら、日向小次郎君(人気アニメ・キャプテン翼の主人公のライバル)・・・。 アニメの話だと思っていたが現実は違う。世界を知らない自分が恥ずかしかった。そして、自分にできることがあれば、 いつか世界に目を向けた活動がしたいと思った。それから十数年後、自分は青年海外協力隊になり、スリランカに来ている。
 活動内容は、サッカー指導である。配属先のスリランカサッカー連盟から出された課題は、 「ユース・ディベロプメント」である。8歳から19歳までの選手たちの指導にあたり、現地指導者には技術指導のアドバイスを することが、自分の与えられた役目である。この課題に取り組むために、大きく2つの活動をしている。

2.普及活動~ボールは宝物

 一つはサッカーの普及である。任地カルタラ県内の学校を週に11校、巡回指導している。 毎朝、活動拠点のスタジアムからボールとコーンなどの用具を軽トラックに積み、同僚とともに活動先に向かう。 地方の道路は、日本のようにきちんと整備されているわけではない。 山間部の学校から海岸近くの学校までガタガタ道を進む。そして、各学校には十分な物資がなく、 子どもたちの中にはサッカーシューズが買えない子も多数いる。 そして素足で練習に参加しようとする子どももいる。
 また、子どもたちにとってボールは宝物だ。ボールとともに学校に着くと、我先にとボールを奪い合い、ボールと遊ぶ。 子どもたちはサッカーが大好きだ。十分にサッカー用具がなく途上国だということ実感するときもあるが、 楽しそうにサッカーをする子どもたちの姿が自分の活動の源になっている。用具は足りないが工夫はできる。 練習方法は、鬼ごっこやリレー、パスゲームに手つなぎサッカーなどなど。ここでは、サッカーを楽しむことをベースに指導している。 ボールに触れる回数が少ない子どもたちは、ボールコントロールの技術が不足している。この問題を解決するために、 現在同僚とともに試行錯誤をしている。
 普及活動の一環で、毎週土曜日の午前中に、活動拠点のスタジアムで、子どもたちのためのサッカー教室が無料で行われる。 指導者は自分を含めて5名。自分はボランティアで来ているので当然だが、ほかの4名の指導者もこの活動を無報酬で行っている。 彼らはスリランカサッカーの発展のために情熱を持って取り組んでいる。そして、毎回男女合わせて100人を超える数の子どもたちが、 このサッカー教室を楽しみにやって来る。

3.技術の向上~言葉の壁

 もう一つの活動は、サッカー技術の向上である。毎週2回、カルタラ県内の上手な選手たちを集めて練習会をしている。 対象は、U-17とU-15の2つのカテゴリーの選手である。上手な選手同士を集めて練習することで、競争意識が高まり、 互いのレベルアップを図っている。また各学校へ戻ってリーダー的な存在になってほしいという狙いもある。
 しかし、異国ならではの苦労もある。特に言葉の壁である。多民族、多宗教国家のため、各地域から集まった選手たちに 指導する際にシンハラ語とタミル語の2つの言語が必要となる。語学訓練でシンハラ語を勉強してきたが、タミル語は分からない。 そのため指示が通らないことがある。また、選手たちに伝えたいことがうまく言葉にできずに、もどかしいときもある。 通訳がいるわけではない。日々、身振り手振りで選手たちから勉強させてもらっている。
 スリランカの選手一人ひとりは、決して下手ではないと半年間過ごして思う。しかし、どの年代の選手もチームで ボールを奪うことやボールを運ぶことが苦手である。また、ボールを持っていないときの動き方も理解しないといけない。 「サッカーは1人だけでするスポーツではない。仲間と協力することが大切だよ」とよく選手に話す。 やるべきことはたくさんあるが、一つひとつ焦らず、「サッカーを楽しむ」ことを忘れずに指導にあたりたい。

4.指導者勉強会

 これからの課題として、指導者の数と質の拡充を図ることが挙げられる。 サッカーが好きな子どもたちはスリランカにはたくさんいる。しかし、正しい知識を持って指導できる指導者が足りない。 1人で50人以上の子どもたちを一度に指導することがある。スリランカサッカー連盟でも、 指導者講習会を開催しては指導者の拡充を図っている。今後の自分の活動の中にも、 指導者講習会ではなく指導者勉強会を開きたいと企画・検討中である。自分は優れた選手でも指導者でもない。 サッカーが大好きで、そして人を育てることに大きな魅力を感じているだけだ。 実際、現地の指導者から学ぶことも多い。そのため、任地の人たちとともに考え、共に汗を流して、 スリランカサッカーの発展のために、自分のレベルアップのために、力を尽くしたい。

5.おわりに

 学生時代、世界に目を向けた活動がしたいと思った。それが現実となり、 現在、青年海外協力隊として毎日大好きなサッカーをしている。サッカーのことだけでなく、 自分がスリランカの子どもたちに伝えていることは、日本で数多くの指導者から勉強させていただいたことばかりである。 スリランカの子どもたちが大きくなっても、1人の日本人と仲間とともに楽しくサッカーしたことを忘れないでいてほしいと願う。 そのために今日もボールとともにガタガタ道を進む。