JFA|日本サッカー協会  Japan Football Association
JFAへの登録リンクENGLISHRSS

国際交流・支援活動トップに戻る
国際交流・支援活動

【海外赴任レポート】 ブータン 小原 一典さん 2013年7月

【プロフィール】

小原 一典(おはら・かずのり)

1972年7月5日生まれ。千葉県船橋市出身。
小市立船橋高校を卒業後、獨協大学に進学し、サッカー部に所属。1996年から草加ジュニアユースのコーチとして指導者の活動をスタートする。99年にスペインに留学し、地域リーグのAtletico Valdemoroでプレーした後、指導者として、スペインの4クラブを渡り歩き、アシスタントコーチや監督を務める。2003年にはスペインサッカー連盟公認プロライセンスを取得。日本に帰国後は、JFA公認C級コーチライセンスを取得し、大塚製薬サッカースクールU-13、徳島ヴォルティスU-18、福島夢集団ユンカース、JヴィレッジスポーツクラブU-15の監督を歴任。2012年にブータン代表の監督に就任し、現在に至る。


~派遣国・地域の紹介 : ブータン~
南アジアに位置し、インド、中国と隣接。首都はティンプー。面積は約3万8,394平方km(日本の九州とほぼ同じ)で、人口は約70万8,000人(ブータン政府資料2011年)、民族はチベット系、東ブータン先住民、ネパール系など。公用語はゾンカ語。宗教はチベット系仏教、ヒンズー教など(以上、外務省ホームページなどを参考)。
FIFAランキング:207位(2013年7月4日発表時点)


 2012年5月からJFAのアジア貢献事業の一環で、ブータンに代表監督およびアカデミーヘッドコーチとして派遣されています。日本人3人目のブータン代表監督になります。早くも就任してから1年が過ぎますが、「幸せの国」ブータンサッカーの様子をお伝えします。

ブータン代表

 ブータン代表で有名なのは、2002年のFIFAワールドカップ日韓大会の決勝当日、当時FIFAランキング最下位のモントセラト代表と、その一つ上のブータン代表が「もう一つの決勝戦」と題し、ブータンの首都ティンプーで国際Aマッチを戦いました。この試合は「The Other Final」として映画化されています。ブータン代表が4-0で勝利するのですが、現在、私の住んでいるティンプーは標高2,400mに位置し、モントセラトの選手たちが気候に適応できず、苦戦したのが目に浮かびます。
 私が就任してからのA代表の活動は、昨年11月にタイ・バンコクでタイ代表と親善試合を行ったのみです。予算の関係もあり、なかなか強化試合ができません。ブータン代表は、軍人、警察官、学生、サッカー協会スタッフ等のアマチュア選手で構成されます。タイ代表には0-5で敗戦しましたが、選手たちは最後までよく戦ってくれました。ロストバゲッジでユニフォームが届かず、タイサッカー協会に新しいユニフォームを準備していただくというアクシデントもありました。
 「もう一つの決勝戦」が行われたチャンリミタン競技場は、FIFAのゴールプロジェクトにより、昨年12月、ブータン初の人工芝競技場に生まれ変わりました。この落成とともにブータンで初めての全国リーグがスタートしました。ティンプーからはリーグの上位3チーム、他県から3チームが参加しています。試合は週末のみ行われ、ホーム&アウェイ方式で約3カ月にわたって開催されました。それまでのリーグ戦はティンプーのみで短期集中開催されていたので、ブータンサッカーにとっては画期的な出来事です。
“試合→トレーニング→試合”というサイクルと、グラウンドの質の向上に伴って、プレーの質も向上することが期待されます。

アカデミーヘッドコーチとしての現状

 ブータンサッカー協会の隣にアカデミーの宿泊施設があり、国際大会を前に各カテゴリー代表が合宿をします。就任当時、今年のAFC U-16選手権 予選に向けて、「15歳の選手をアカデミーに宿泊させているので、トレーニングしてほしい」と協会から言われました。実際指導を始めると、20名いた選手のうち18名がオーバーエージで、協会に問い合わせると、「コーチ、次の冬休みにもう一度セレクションを行えば大丈夫」という返事。このように、のんびりしているのが、良くも悪くもブータン流。おかげでたくさんの選手を指導する機会を得ました。
 現在のアカデミー生は、今年の冬休みに選抜された1998年生まれの選手たちです。昨年10月に「キズナ強化プロジェクト日-SAARC被災地支援U-14サッカー交流プログラム」でU-14ブータン代表が日本に招待され、即席チームをつくって伺いましたが、このときの選手の多くが、今年のアカデミー生に選考されています。
 ブータンでは、アカデミー以外で定期的にトレーニングを行うユースチームがありません。アカデミーの施設はシャワーがなく、水道水もよく止まり、近くの川で洗濯したり、体を洗ったりする状況です。しかし、ブータンの選手たちはこのような環境でも意外と平気で、普段指導されることがないからなのか、練習にも非常に関心を持って取り組んでくれています。日本遠征では全ての試合に大差で負けましたが、成長著しい彼らが今年秋のAFC U-16選手権 予選でどんな戦いをしてくれるのか楽しみです。

今後のブータンサッカー

 「あなたは幸せですか?」という問いに、9割以上の国民が「幸せです」と答える幸せの国ブータン。4代ブータン国王が提唱したGNH(国民総幸福量)は世界的にも有名です。国技はアーチェリーですが、若い世代にはサッカーが一番人気。幸せのツールとしてブータンにサッカーが浸透しています。
 「勝利を目指して、日々ハードワークしますか?」という問いはしたことがありませんが、おそらく首をかしげる選手がまだ多いような気がします。しかし、勝ちたい気持ちはどの選手にもあり、環境の改善とともに選手たちの意欲が育っているのも確かです。近い将来、アジアの強豪国を驚かせることを夢見て頑張っています。