JFA|日本サッカー協会  Japan Football Association
JFAへの登録リンクENGLISHRSS

国際交流・支援活動トップに戻る
国際交流・支援活動

【海外赴任レポート】 カンボジア 手島 淳さん 2010年1月

【プロフィール】

手島 淳(てしま・あつし)

岡山県津山市出身。1963年6月20日生まれ。
オランダ、ドイツ、旧ユーゴスラビアにコーチ留学・研修し、その縁で長年、ハンス・オフト氏(元日本代表監督)の通訳を務める。
指導者としては、横浜フリューゲルス(当時)、ジュビロ磐田などでプロ、育成、グラスルーツに携わり、日本女子サッカーリーグ、指導者養成など多岐に渡っ て指導経験を持つ。
JICA シニアボランティアとして2009 年6月より今回2度目の派遣(任期は2010年4月まで)でカンボジアサッカー連盟(FFC)ナショナルユースディレクター として任務に就き、2009年秋に開催されたAFC U-16選手権予選大会に監督として参加した。ドイツサッカー連盟Bライセンスコーチ。


~派遣国・地域の紹介 : カンボジア~
カンボジア王国はインドシナ半島にあり、ベトナム、タイ、ラオスに接している東南アジアの国。 首都はプノンペン。近隣の国とは陸続きであるが、国民の90%以上がクメール人(カンボジア人)である。 言語はクメール語(カンボジア語)、宗教は仏教である。面積は181,035 k㎡(日本の約半分)で、 人口は約1,500万人(2008年)、東京都の人口より少し多い。気候は熱帯モンスーンで、高温多湿で一年を通して最高気温30度を 下回ることはほとんどなく、日中のトレーニング、試合はかなりハードである。 サッカーに関しては、FIFA ゴールプロジェクトにより2003 年にプノンペン郊外にナショナルフットボールセンターが建設され、 約40名の宿泊施設、オフィス、芝生のサッカーピッチを保有。また、カンボジアトップリーグであるCPL (Cambodia Premiere League)があり、10クラブ(2008シーズンより)で構成され、そのほとんどがプノンペンのクラブである。 F I FA ランキング2009 年11月現在172位。



 今回、カンボジアサッカー連盟(FFC)のナショナルユースディレクターとして育成年代の各ナショナルチームの指導、 青少年指導者の養成・育成、青少年サッカーの普及、青少年の育成・強化プロジェクトのデザインなどをFFCより要請され、 AFC U-16 選手権予選にはU-15 カンボジア代表の監督として参加しました。
 結果は5戦5 敗、2得点34失点と、結果だけ見れば惨敗です。ハプニングも多く一冊の厚い本が書けるような大会でしたが、 その過程における成果・成長は指導者冥利に尽きる思いでした。大会を通した過程における変化をお伝えできればと思います。
 前回赴任時には見えなかった問題点として、①「選手のサッカー活動環境」、②「選手の資格年齢」、③「選手選考の過程」の 3つの点には、今回特に注意を払いました。
 ①「選手のサッカー活動環境」に関しては、危惧した通り、年間120日足らずの活動でほとんど公式戦を経験していません。 そのため、サッカーの面でとても未熟で、技術的にはヘディングが額に当たらない、 20mから30mのボールが蹴れない状態ですからコントロールも未熟でした。戦術に関しても、 攻撃はするが守備は皆無に等しい状態、また、体力的には90分のゲームは彼らにとって未知なる世界だったと思います。
 ②「選手の資格年齢」に関しては、細心の注意を払い、選手に面接の際、生まれた干支(日本と同じく十二支の干支を使用)を 確認し、四苦八苦しました。今回の参加選手の体格を考慮すると気持ちは察しますが、 決して受け入れられることではありません(カンボジアの平均身長/体重は159cm/45.8kg。同グループだった韓国は177cm /66.8kgで その差は-18cm /-21.0kg)。内戦直後の混乱の中で生まれ育った世代ですから、恐らく栄養摂取も悪く、 その影響は大きいと思います。また、食習慣の上で日本人の3倍コメを食べる民族です。 大会中、ホテルでチャーハンをおかずに食事をしている選手には驚きました。
 ③「選手選考の過程」については、今まではプノンペン選抜がカンボジア代表チームとして出場していたに等しく、 また①にも関係することですが、活動がほとんどないので選手選考のため試合を視察することはできませんでした。 しかし、今回初めて7地域44名の中から代表選手を選考しました。これはFFCにとってとても画期的なことでした。

「Let's start Cambodian Football!」(カンボジアサッカーの流儀!)

 大会への準備は、選手選考をしつつ体力の向上とコンセプトの習得に努めました。 目的・目標を「Let's start Cambodian Foot ball!」(カンボジアサッカーの流儀!)とし、FFCとも話し合い、 結果より過程・成果を評価したい意向が受け入れられ、『Watch! Think! Feel! AndAction!!』をスローガンとし、 延べ25日38回のハードなトレーニングを行いました。
 トレーニングは毎回約2時間、ウォームアップから常にボールを使いながら技術・戦術のトレーニングに励みました。 日ごろ練習していないため選手たちはハングリーで文句も言わずよくやり通したと思います。 サッカーに関してですが、特にディフェンスは4人が並んで立っているだけで、 策略があるわけでもなく中盤の選手はボールを失っても追いかけず歩いて戻る状況でした。 そこで、できるだけ個人の役割と責任(マークの意識)をはっきりさせ、「ボールを待つディフェンス」から 「ボールを取りに行くディフェンス」、特に体格に恵まれない分「インターセプト」が狙えるように変化させました。 これは『カンボジアサッカーの流儀』にかかわることで、援助慣れしているとも言えるこの国の人たちは、 援助を待つことはしても、ともすると自らが考えて取り組む姿勢が低いので、私自身、 この国の未来を背負って立つ若い世代に向けた流儀の一つでした。
 タイ戦0-8、韓国戦0-11、ベトナム戦1-7、ミャンマー戦1-3、朝鮮民主主義人民共和国戦0-5と、 結果だけ見ればディフェンス崩壊に見えます。34失点中26失点はビルディングアップ中に大きなミスをしたためで、 もしかすると「ボールを待つディフェンス」の方が、失点が少なかったかもしれません。 しかし、大敗した韓国戦の中でも意図したディフェンス、追い込んだ形でのインターセプト等も多くあり、 決してゴール前に張りつき状態ではありませんし、当初のチームレベルを知っている私にとってはとてつもない変化で 満足できる成果でした。
 これからサッカーを通して人が育まれるよう、指導者の養成(モラルの向上・意識改革)、 サッカー活動環境の向上(年間200〜250日の活動)など取り組む課題は多いですが、 サッカーを通した活動が彼らの生き方を変え、この国の発展につながっていくことと信じたいです。
 最後になりましたが、今回私をサポートしてくださったFFCスタッフ、JICA、日本サッカー協会、 そして最後まで頑張った選手に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。