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国際交流・支援活動

【海外赴任レポート】 グアム 築舘 範男さん 2013年9月

【プロフィール】

築舘 範男(つきたて のりお)

1960年4月2日生まれ。青森県南津軽郡大鰐町出身。
愛知県立豊田西高校卒業後、当時の日本サッカーリーグ(JSL)2部、トヨタ自動車工業サッカー部でプレー。その後、同サッカー部コーチを経て、1992年に名古屋グランパスエイト(当時)のトップチームコーチに就任。同チームユース(U-18、U-15)強化責任者、スカウトを経て、日本文理大学附属高校(大分県)監督、清水エスパルスユース監督を歴任。2005年にグアムへ渡り、代表チームの監督として指導。2011年3月よりU-16/U-19東ティモール代表の監督に就任し、現在も活動中。


~派遣国・地域の紹介 : 東ティモール民主共和国~

東南アジアに位置する島国。首都はディリ。面積は約1万4,900km2(日本の首都4都県(東京、千葉、埼玉、神奈川)の合計面積とほぼ同じ)で、人口は118万人(2011年、出典:世界銀行)、民族はテトゥン族等大半がメラネシア系で、その他マレー系、中華系等、ポルトガル系を主体とする欧州人およびその混血など。国語はテトゥン語およびポルトガル語。実用語にインドネシア語および英語が使われており、そのほか多数の部族語を使用。宗教はキリスト教が大半で、イスラム教が少数(以上、外務省ホームページなどを参考)。
FIFAランキング:182位(2013年9月12日発表時点)

東ティモールでの活動

 2011年3月11日、忘れもしない東日本大震災の日に、私は東ティモールに赴任しました。NHKの海外放送で「映画の放映か?」と思ったら、津波の映像でした。あれから2年と半年、私はユース年代の代表監督として、AFC U-16選手権予選(2011年/朝鮮民主主義人民共和国)、AFC U-22選手権予選(2012年/インドネシア)、そのほかAFF(ASEANサッカー連盟)の地域大会(U-23、U-18、U-15)に参加し、大きな経験をさせていただいています(全てグループリーグ敗退)。
 東ティモールは10年前にインドネシアから独立しました。当時、多くの人が内紛で命を落としましたが、国際連合の支援のもと、民主主義国家として誕生したばかりの国です。1日2ドルのお金で生活する人が国民の75%と言われ、若者の失業率は50%を超えると言われています。また、夫婦の間には平均7~8人の子どもがいます。
 私は日々、この中でいかにサッカーの強化を進めるかを考えています。まず、この国の特徴、国民性はどうなのか?
 ①汚職がまん延し、人間不信がある。
 ②長期的プランを持てず、今日、今をいかに過ごすかが全て。
 ③サッカーは唯一の国民的スポーツで、人気ナンバーワン。
 ④責任感が希薄で、約束事やアポイントメントは成立しない。

 悪いことばかりが目立つようですが、この国で自殺する人はいません。何かに追い詰められている人を見たことがないのです。日本では全てが緻密(ちみつ)に計画され、それが良いところでもありますが、またそれが人を追い詰めてしまうことがあります。東ティモールでは計画性がなく、約束事が守られませんが、それでも社会から取り残されることはありません。どちらが良いのかは私には分かりませんが、言えることは「双方ともすばらしい国民性である」ということでしょう。肯定はすれども、否定するものではないと思います。
 これほどの価値観の違いの中で、私は本当にこの国で指導ができるのか不安でした。そうした中でまず私が手掛けたことは、練習の時間厳守と、参加できないときは必ず事前連絡をさせることでした。これは非常に初歩的で幼稚ですが、実際に徹底するとなれば、日々戦いでした。事前の連絡がなく練習に参加しなかった選手が次に参加してきたときは、「こちらの練習計画に君は入っていない」と告げて帰ってもらいました。選手には毎月20ドルを交通費として支給するのですが、東ティモールサッカー連盟は支払日を過ぎても払うことがなく、ひどいときには2カ月も未払いのことがあります。経理担当者に毎月の稼働日に現金を渡してもらうようにし、私から選手に手渡すようにしました。ペナルティーも科しており、遅刻は1回1ドル、欠席は1回2ドルで、そのお金は皆勤の選手に回しています(皆勤の選手は1カ月で60ドルを得ることもあります)。半年ぐらい経つと選手も分かってきます。規律が出てきたのです。今は無断で練習に来ない選手はまれです。
 次に手掛けたことは、パスの練習でした。考え方が自分中心で、他人の状況の分析は苦手な選手が多く、基本的にドリブル主体のサッカーです(人間不信や教育の課題か?)。そして、ボールのないときの動きの必要性や準備について、日々ハードなメニューを与えました。とにかく走ってボールを動かすのです。約2時間の練習で、1時間はアップの流れから走り、パスの練習を行いました。今は15歳から23歳までの多くの選手と過ごした2年半があるので、少しグループ戦術的なことも入れ、大会前はチームとしての約束事も練習できるようになってきました。
 今まで、アジアサッカー連盟(AFC)主催大会の予選やAFFの大会において、私が指導したチームはグループリーグを突破していません。過去に、AFC U-16選手権予選で金さん(KOICA職員)が指導し、一次予選を突破したことがあります。今年9月には「AFF U-19ユースチャンピオンシップ 2013」がインドネシアのスラバヤで開催されます。グループリーグはシンガポール、オーストラリア、カンボジア、ラオス、フィリピンと同組です。何とか上位2チームに入り、決勝トーナメントに参戦できるように、今日もハードな走りやパスの練習をやろうと思います。