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国際交流・支援活動

【海外赴任レポート】 シリア 屋良 充紀さん 2008年1月

【プロフィール】

屋良 充紀(やら みつとし)

神奈川県出身。37歳。
ブラジル・サンパウロ州リーグ「ECサントアンドレ」、「GEマウアエンセ」などでプレー。その後、エクアドル、コロンビアでもプレーした経験を持つ。
コロンビアリーグ「サンタフェ」では選手兼プレフベニール(15~17歳)のアシスタントコーチも兼任。2000年~07年3月まで横浜FC泉ジュニアユースの監督を務めた。また、横浜市内ではサッカースクール(4歳~15歳)「エスコリーニャ・フッチボル・クルービ」を開校し、現在も活動中。
2007年6月19日よりアジア貢献事業の中で最も西に位置するシリアで活動し、2008年1月15日に開校したSFAフットボールアカデミーでヘッドコーチを務める。JFA公認B級コーチ。


~派遣国・地域の紹介 : シリア~
ユーラシア大陸西部、地中海東岸にある共和国。正式国名はシリア・アラブ共和国。隣接するレバノンに大きな影響をあたえ、イスラエルに対しては強硬派として知られる。中東情勢を左右する上で、最も重要な役割を持つ国のひとつ。
古くはシルクロードの要点であり貴重な遺跡が数多く点在する。
面積は18万5180平方キロメートル(日本の約半分)。人口は1,836万人(2006年シリア統計局推定)。
首都ダマスカスは、国内最大の都市。公用語はアラビア語。
FIFAランキング:126位

ユーラシア大陸西部、地中海東岸にある共和国。正式国名はシリア・アラブ共和国。隣接するレバノンに大きな影響を与え、イスラエルに対しては強硬派として知られる。中東情勢を左右する上で、最も重要な役割を持つ国の一つ。古くはシルクロードの要点であり、貴重な遺跡が数多く点在する。面積は18万5180km(日本の約半分)。人口は1,836万人(2006年シリア統計局推定)。首都 ダマスカスは、国内最大の都市。公用語はアラビア語。(以上、エンカルタ総合百科、外務省ホームページより)。
一番人気のあるスポーツはサッカー。FIFAランキングは107位(2007年12月現在)。


1.シリアサッカー

 U-17シリア代表は、2007年8月に韓国で行われたFIFA U-17ワールドカップで、惜しくも決勝トーナメント1回戦でイングランドに負けてはしまいましたが、インパクトを与えるチームだったと思います。U-22シリア代表(オリンピック代表)はアジア2次予選で日本と同じグループBを2位で通過。最終予選はグループ3位で、残念ながら本大会出場はなりませんでした。
 2010年FIFAワールドカップ南アフリカ大会出場を目指すA代表はアジア3次予選まで駒を進めています。イラン、クウェート、UAEとグループ5はすべて中東の国々で意地を懸けた激しい戦いが予想されます。このように、代表レベルでの戦績はユース年代がピークになってしまっていてA代表、オリンピック代表は国際大会出場には至っていません。
 一方、国内リーグは1部リーグ14チーム、その下に2部、3部リーグまであり、1部リーグ所属のチームに関しては監督、コーチ、選手共にプロ契約。2、3部はプロリーグではありませんが、チームによっては個々にプロ契約をしているようです。代表的なクラブはアル・カラーメで、一昨年のAFCチャンピオンズリーグでは決勝まで駒を進め、浦和レッズが優勝した2007年の大会も準々決勝で惜しくも敗れたものの、西アジアの強豪クラブとして知られるようになりました。

2.指導現場の矛盾

 シリアでの私への要請は「ユース年代の指導」と「指導者の育成」です。しかし、前述した通り、ユース年代(U-17)では代表、クラブ共にプロのコーチングスタッフがおり、毎日活動しています。クラブによっては場所や用具に問題を抱えながらも現場コーチの情熱で熱心に強化されています。
 その一方でU-15の子どもたちの練習風景を見たときにギャップを感じてしまいました。40人はいると思われる子どもに対してボールはわずかに2個。そこで行われるのは、コーチがランダムに選んでミニゲームをさせる光景でした。U-12も同様で、さらに多い人数に対してやはりボールは2個。ゴールデンエイジと呼ばれる重要な時期にボールに触れる機会があまりに少ないと感じたのです。
 私が日本で指導していたときには、子どもたちは個々にボールを持っていてボールコントロールなどのトレーニングに困ったことはありませんでしたが、その代わりに、「ボールに対しての執着心などが欠ける場面が見受けられるのは、そのためではないか…」とか、「満たされ過ぎるあまり、欠けてしまうものもあるのではないか…」と考えたりもしました。しかし、さすがに40人にボール2個では話しになりません。
 さらに、10歳以下の子どもたちがサッカーをしている姿をあまり見かけなかったのです。南米であれば、そこかしこで子どもたちがミニゲームに興じていますし、日本でも少年団やサッカースクールで楽しくサッカーをしている年ごろなのですが、シリアでは、そんな姿は滅多に見かけません。彼らは学校の休み時間や放課後に遊ぶ程度なのです。
 そして、その子どもたちが、12歳になって、プロの下部組織のテストを受けるという流れになるのです。

3.では、何をすべきか・・・

 この国ではAFCの指導ライセンスを持っている指導者もいますが、その多くはトップチームの現場で指導しています。ですから、下部組織のU-15、U-12と低い年齢の子どもたちを指導するコーチとなると知識、経験共におのずと低くなってくるのは仕方のないことでしょう。そして、知識のあるコーチたちもそれを還元するような場や方法があれば良いのですが、そのような考えはないようです。
 そんな現状を見て、私がまず取りかかったのが「シリアサッカー指導指針」の作成でした。できるならシリア人指導者がつくるべきものとも思いましたが、その発想がないのであれば、私が作成し、その必要性を分かってもらってからシリア人指導者の手で改良していけば良いのではと考えたのです。
 次に、各クラブであまり力を入れていない年代、U-12のアカデミーの開校です。本来なら一番サッカーの楽しみを吸収し、アジリティーやテクニックが飛躍的に伸ばせるゴールデンエイジの子どもたちを、各年代の代表も使用しているトレーニング・フィールドでトレーニングし、『普及、発掘、育成、強化』の4つを同時にしていけないかと考えました。
 まずは、普及部門からスタートし、サッカーを楽しむすそ野を広げ、その中からトレセンのような役割を持てるようにし、それがモデルとなって各地で同様のアカデミーができれば、その中からナショナルトレセンへと強化しやすくなるでしょう。さらにそこからU-12の代表をつくれば、その上のU-15代表もスムーズに強化していくことができるのではないかと考えたのです。そして、ジュニア年代の8人制サッカー大会の開催や女子選手の普及にも着手していければとも考えています。さらには、アカデミーの子どもたちをモデルに指導指針を使い、講習会を開催して若いコーチたちの勉強会の場も提供できるでしょう。多少強引とも思われますが、この国の社会主義国的側面をうまく引き出して強化していければ近い将来、必ずFIFAワールドカップに出場できると思うのです。
 このアカデミーのプレスクールは2008年の開校に向けて準備が始まっています。その後、セレクションし60人の子どもたちを育成していきます。校長にはシリアサッカー協会ゼネラルセクレタリーのタフィック・サルハーン氏が就任し、ゴールデンエイジ年代の現場強化を約束してくれました。また、シリア代表のファジェール・ハマッド・イブラハム監督もテクニカルスタッフに加わることが決まりました。

4.最後に

 2007年のAFCアジアカップで隣国のイラクが優勝しました。そのときシリアでもものすごい歓声が上がりました。実はシリアにはたくさんのイラク人難民が住んでいるからなのです。戦争でめちゃくちゃにされ、今もなお苦しい状況が続くイラクが優勝するということは、多くのイラク人に大きな希望を与えたことでしょう。
 シリアは、世界的にあまりイメージの良くない国と思われがちですが、それは全くの誤解です。多くのイラクやパレスチナの難民を受け入れたり、近年ますます難しくなる中東情勢のバランスをとっている国なのです。人々は皆、親切で心から平和を望んでいます。そして、そのシリア人が一番好きなスポーツがサッカーです。中東、西アジアのサッカーはポテンシャルの高さを生かし、今後ますます強くなるでしょう。その中でシリアも切磋琢磨し、力をつけていくことは間違いありません。そんなシリアのサッカーに関わることができ、多くのことを学べることに感謝しています。そして、私と一緒にボールを蹴った子どもたちがFIFAワールドカップに出場することを強く願っています。