JFA|日本サッカー協会  Japan Football Association
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2013.02.08
第3回 サッカー界から体罰や暴力行為を撲滅する

「スポーツと体罰」の問題が連日にわたって大々的に報道されており、スポーツ界の指導体制の在り方について疑問が投げかけられています。
 連日、指導現場における暴力行為のニュースが喧伝されている中で、「サッカー界は例外」などと言う気は毛頭ありません。事実、愛知県の私立高校サッカー部顧問による部員への暴力行為や大阪府の少年サッカークラブの監督による選手への体罰の実態がマスメディアやソーシャルメディアなどで報じられました。サッカーを指導する現場でこのようなことが起こったことは誠に残念ですが、今後、二度と起こらないよう、その防止策とリスペクトやフェアプレーに関する啓発活動を徹底する必要があると強く感じています。

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<2012年9月2日に開催したリスペクトFC JAPAN シンポジウムで>

フェアプレーとリスペクトの推進
 フェアプレーはスポーツで最も美しい場面です。ルールを尊び、相手を、審判を、ファンをリスペクトする姿勢が表れたゲームは、観る者に清々しい感動を与えてくれます。
 JFAはこれまで、長年にわたってフェアプレー精神やリスペクト、Players First(プレーヤーを第一に考える)の考えを訴え、JFA公認指導者や審判、選手、保護者らに発信してきました。
 1994年にはフェアプレーの浸透を目的に、機関誌『JFAnews』でフェアプレーキャンペーンを展開。1997年には創立100周年に向けて「JFAの決心(行動宣言)」を発表し、"フェアプレーを推進し、性別や年齢、障害の有無にかかわらずスポーツを楽しむ環境を広げていく"といった行動計画を打ち出しました。翌1998年には「JFAサッカー行動規範」を策定。最善の努力をすること、あらゆる面でフェアな行動を心がけること、ルールの遵守、相手をリスペクトすること、良き勝者・良き敗者であること、仲間を増やすこと、よりよいサッカー環境を広げること、責任を持って行動すること、健全な経済感覚を持つこと、薬物や差別など社会悪に立ち向かうこと、常に感謝と喜びの気持ちを持ってサッカーに関わることという10の指針を掲げ、それらを推奨してきました。

 最近では、2004年からU-12年代の大会を対象に「グリーンカード」を導入し、ケガをした選手への思いやりや危険なプレーなどの際の謝罪や握手など、清々しい行動をとった選手やチームにカードを提示してその行為を讃え、フェアプレーの推進を図っています。
 また、2009年には「リスペクト・プロジェクト」を設置し、「リスペクト=大切に思うこと」として、仲間や対戦相手、審判や指導者らがそれぞれを大切にし、より良いサッカー環境を広げていくことを目指しています(2011年「リスペクトFC JAPAN」を設立)。指導者養成の場や指導現場でも「Players First」を念頭に、「選手の育成指導に関わることは、選手の人間教育に深く関わること」という認識を持つよう指導者に求めてきました。そのほか、『大切に思うこと』『合言葉はPlayers First!』『めざせ!ベストサポーター』といった冊子をつくり、登録するチームや保護者などに配布して理解を求めています。
 こういった取り組みを行っているにもかかわらず、今回、サッカーの指導現場で「体罰」の実態があったことは誠に遺憾であり、我々の働きかけが不十分だったことに忸怩(じくじ)たる思いを持っています。
 JFAは1月29日付で地域/都道府県、各種連盟に対して、またJリーグは1月31日付でJクラブに対して通達を出し、体罰のない指導方法の徹底について一層の注意を喚起しました。今後、開催される指導者研修会や各都道府県の責任者が集まる会議、各種委員会でも「体罰や暴力行為の撲滅」を訴えるとともに、その徹底を図っていきます。
 もちろん、これで十分だとは考えているわけではなく、「スポーツから体罰を撲滅する」という強い決意を持ち、より具体的に、スピード感を持って取り組む必要があります。

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スポーツ指導に暴力は必要なし
 スポーツが心身の鍛錬の一環として取り入れられてきた時代の中で、指導する側にも受ける側にも体罰を容認する風土があったのは事実ですが、それも、もう時代遅れ。良い選手を育てるのに体罰や暴力は必要ありません。指導者もフェアでリスペクトの精神をもって選手と向き合うべきです。
 体罰や恫喝で良いプレーを強要するなど指導力不足以外の何ものでもありません。時として、厳しい指導や指示で一時的に緊張感やモチベーションを上げることはあっても、そういった"外的動機付け"が長時間もつことはありません。"内的動機付け"――つまり、選手や子どもたち自らが「うまくなりたい」、「勝ちたい」、「成功したい」と思うが大事で、その気持ちを育むことこそが指導の第一義でしょう。

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 指導者が体罰に走る要因として、指導力不足が挙げられます。選手に的確な指示ができずに感情を爆発させるといったことは、"言語能力の未熟さ" "コミュニケーション力の低さ"によるものでしょうし、選手の発育やレベルに合った指導をしてないからとも言えるでしょう。また、対象となる選手数が多すぎてきめ細かい指導ができないというケースもあるはずです。
 JFAでは、指導者養成講習会の中で言語技術習得のトレーニングとして、「ディベート」や「プレゼンテーション」のほか、様々な思考ゲームを取り入れています。そういったトレーニングを積むことによって、論理的に、的確に指示が出せるようになり、選手も高い理解力をもって練習に励むことができるのです。
 今回の問題を機に、指導者養成プログラムについても見直しを図り、より具体的な指導指針を示していきたいと考えています。また、各種委員会でも然るべき対応策を講じるべきかと思っています。
 加えて、指導者講習会のほか、公認指導者に配布している『テクニカルニュース』や公式ホームページなどの公式媒体を用い、S級からD級に至る全ての登録指導者に対してJFAの暴力行為撲滅に対する理念とサッカー界の意思を広く浸透させていきます。

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今後の対応
 JFAの基本規程では、違反行為があった場合、当該する都道府県サッカー協会が規律委員会を開いて懲罰を科すことを明記しています。重大なものについては、JFAの規律委員会で審議し、懲罰します。競技及び競技会以外で起こった違反行為についても、都道府県協会の規律委員会ないし倫理委員会等で審議され、重大な事案はJFAの裁定委員会に諮られることが定められています。
 体罰や暴力行為に関する問題も規約に則って対処することになりますが、もしも都道府県でそのような事案が発覚した場合は速やかに事実を確認し、たとえ匿名の通報等であっても決して放置することなく真相を究明し、事案によっては厳正な処分を下したいと考えています。

 JFAは、『JFA2005年宣言』で「サッカーの普及に努め、スポーツをより身近にすることで、人々が幸せになれる環境を作り上げる」というビジョンを掲げています。このビジョンを具現化するためにも、「スポーツに関わる全ての人たちを大切に思い、リスペクトする」という原点に立ってこの問題と向き合い、その撲滅を訴えていきます。
 また、体罰や暴力行為の矛先は指導者だけに向けられるものではなく、選手同士や先輩後輩の関係でも起こりうることですので、トッププレーヤーから子どもまで、また、審判や保護者などサッカーに関わるすべての人たちに「リスペクトの精神」、「暴力行為撲滅の意識」を持って活動するよう、我々の考えを発信してく考えです。
 今こそ、日本のスポーツ界が大きく変われる、さらに進歩できるチャンスだと思っています。サッカーファン・サポーターの皆様におかれましてもサッカー界の考えをご理解いただき、その徹底にご協力いただきますようお願い申し上げます。