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 おめでたいニュースが飛び込んできました。
 昨夜(4月3日)、アセアンサッカー連盟 (AFF)の年間表彰式がマレーシアのクアンタンで開催され、ミャンマーの女子代表監督を務める熊田嘉則さんがAFFの最優秀女子監督賞を受賞しました。

 アセアンサッカー連盟には、ミャンマーをはじめ、ブルネイ、カンボジア、東ティモール、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの11カ国が加盟。ここで日本人が表彰されるのはもちろん、初めてのことです。

 受賞に際し、熊田監督は「今ミャンマー女子サッカーの歴史の1ページに名前を刻むことができ、本当に嬉しい」と喜びを語り、この受賞が自身にとって「大きなチャンスであり、課せられた挑戦になる」と話していました。

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 熊田さんは福島県出身の51歳。福島県立棚倉高校から三菱養和サッカークラブ、全日空横浜サッカークラブで選手としてプレー。その後、全日空横浜サッカークラブを手始めに各地のサッカークラブや高校のサッカー部で選手の指導に携わってきました。1992年にブラジルサッカー協会公認のプロライセンスを取得。1998年に大阪学院大学サッカー部の監督に。関西学生サッカーリーグ2部のチームを3年で1部に昇格させ、総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントの舞台に送り出しました。名古屋グランパスで活躍している石櫃洋祐選手やベガルタ仙台の佐々木勇人選手は、熊田さんの教え子なんですよ。

 大阪学院大の指揮を執っていた2005年、JFA公認S級コーチライセンスを取得。2010年には活動の場を韓国に移し、大慶大学の監督に就任。同大学を全国大会に導きました。
 そして、2011年、ミャンマーの女子代表監督に就き、以来、ミャンマーサッカーの発展に力を注いでいます。

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 ちょっと横道に逸れますが、実は日本サッカー、ミャンマーと古い縁があるんです。ミャンマーがビルマだった1920年代初頭、ビルマ人のチョー・ディンさん(日本サッカー殿堂)が日本にやってきて、東京行動師範学校付属中学校などでサッカーの指導を始めました。ディンさんの指導はたちまち評判になり、全国各地の学校でサッカーの巡回指導がスタート。ディンさんの実技指導と理論の教えによって、日本サッカーの技術力は上がり、国際舞台での活躍の基盤が整ったと言われています。
 チョー・ディンさんという偉大な指導者によって、日本サッカーは今やアジアのトップレベルに君臨する存在にまでになりました。

 そして今度は、日本がミャンマーに恩返しをする番です。

 熊田監督によると、旧首都のヤンゴンは、スーパーマーケットやショッピングセンターが増え、ほとんどの物が手に入るようになったと言います。インフラがまだ十分整備されていないため、よく停電が起こるそうですが、着々と民主化に向かって歩みを進めているんですね。そうそう、今月、アウン・サン・スーチーさんが日本を訪れ、安倍晋三総理大臣と会談する予定になっているそうですよ。
 皆さんもこの機会にミャンマーに関心を持っていたき、日本人がミャンマーのサッカーの発展に尽力していることを覚えていてほしいと思います。

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 熊田監督がミャンマー女子代表を指導して驚いたのが、各国共通とも言える「goal」や「out」「corner」といったサッカー用語が通じなかったこと。ファウル(反則)は「ピッタン」、スローインは「レピボ」、オフサイドは「ルチョンボー」等など、全てビルマ語。サッカー指導の経験が豊富な熊田監督も、これには参ったそうです。

 それでも、選手個々のポテンシャルはとても高く、練習にも熱心。ただ、長きにわたって軍事政権が思想や発言の自由を封じていたため、その名残りか、選手は、言われたことは率先してするのですが、自ら考えて行動するということがなかなかできなかったようです。そこで、熊田監督は、ミャンマー人の良さや選手の得意なことなどを聞き出し、それを練習に取り入れました。すると、彼女たちは、持ち前の技術の高さやドリブルバランスの良さ、パスの巧みさを発揮。体格や技術力、考え方が日本人と似ていて、「昔の日本サッカーを見ているようだった」と熊田監督は話していました。

 ミャンマー女子代表チームは、監督、コーチ、GKコーチ、マネージャー、そして選手が25人。選手には所属先があって、みんなプロ、つまり、サッカーで報酬を得ているんだそうです。これは意外。

 熊田監督が就任してすぐに「AFF WOMEN'S CHAMPION 2011 LAOS」に出場。自国で開催された2007年大会に優勝していますが、この2011年大会では有終の美を飾ることができず、悔しい思いをしました。

 今回の「目的を達成する途中での(最優秀女子監督賞の)受賞が、ミャンマー女子サッカー界の大きな飛躍へのご褒美になった」と話す熊田監督は、今年開催されるSEA GAMESで「ファイナルの舞台で、満員の観客の前で優勝カップを勝ち取ることだけを考えて」(熊田監督)、日々、トレーニングに勤しんでいるそうです。

 いつか、なでしこジャパンと一戦を交えることがあるといいですね。

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 JFAは現在、ミャンマーの熊田監督のほか、タジキスタン、ラオス、キルギス、ブータンなどアジアの13の国と地域に15人の指導者を送り出しています(JICA/独立行政法人海外協力機構による派遣含む)。また、審判インストラクターを派遣したり、各国のキャンプを受け入れるなど、AFC(アジアサッカー連盟)のモデル協会として様々なアジア貢献活動を展開しています。

 こういった活動が、アジアのサッカーを発展させ、アジア各国との交流や世界平和に寄与することを願っています。

 また、チャンスを見て、海外で頑張っている日本人の皆さんをご紹介します。