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ウィークリーコラム

 明日からGW後半の連休ですが、スポーツ観戦を楽しむ方も多いのではないでしょうか。
 今週のキャプテンコラムは、プロ選手としての自覚と責任について、川淵キャプテンがお話します。

石川遼選手を見習え

 4月29日のJ1リーグのFC東京対大分トリニータ戦、審判員と選手とのやりとりが問題になっています。もし本当に、審判員が選手を侮辱する言葉を発したというのであれば言語道断です。しかし、その一方で、試合中に選手が審判員に抗議するということ自体、認められていないこと。選手が審判員に詰め寄るというシーンは見苦しいし、観戦している人だってそんなことで折角の白熱したゲームを止められたくないですよね。それを選手は忘れないでほしいと思います。いずれにしろこの件は現在調査中ですので、今の段階では、ここでは言及しないでおきましょう。
 さて、今日の本題に入りましょう。
 皆さんもTVなどを見てお気づきのことと思いますが、ゴルフの石川遼選手の立ち居振る舞い。見習うべき点が多いですね。メディアにコメントを求められると、スポーツマンらしい清々しい態度で的確に質問に答えている。プロデビュー戦となった東建ホームメイトカップ(4月17~20日)では、首位を守れなかった開幕戦の反省を「練習場ではプロになれたけど、コースではまだまだ子どもだった」と振り返りましたが、プロになったとはいえ、世間で言えば、まだ16歳の高校生ですよ。その16歳の少年がしっかり自分の言葉で、しかも非常に印象に残るコメントをしている。なかなかできることではありませんね。それに、インタビューの後は必ず帽子を脱いで「ありがとうございました」と、カメラの向こうのファンにもインタビュアーに対してもきちんと敬意を表わす。スポーツマンの見本ですね。
 Jリーグや日本代表戦に目を転じてみると、誠意と個性に溢れたコメントを言える選手が非常に少ない。カズ(三浦知良)や中山ゴン(雅史)ら、日本サッカーリーグ時代からプレーしてきた選手は安心して見ていられるんですが、中堅クラスや若手の選手の多くが、ぶすっとして「チームメイトのお陰でゴールできました」とか、「応援宜しくお願いします」とか、通り一遍のコメントばかり。「チームメイトがいいパスを出してくれたから」なんていう消極的なコメントより、「これこれこういう状況だったから、俺が走りこんでシュートしたんだ。俺にしかできないプレーだった」というくらい、自己アピールしてほしいと思いますね。チームでレギュラーの座を獲りたい、日本代表になりたい、海外でプレーしたい・・・そういう貪欲さとプロ意識が全く感じられないのは、本人にとっても損だと思うんですけどね。
 インタビューを受けるということは、その試合で活躍したからですよ。それなのに、ほとんどの選手が無愛想。照れ隠しもあるんでしょうが、ニコリともしないで紋切り型のコメントを聞かされたんじゃ、ファンはガッカリですよ。それに加えて、インタビュー後に「ありがとうございました」と笑顔で挨拶できる選手が何人いるか・・・。見ている側としては、いやいやインタビューを受けているようにしか見えないんですよね。初めて見た人は不愉快に感じるだろうし、もうサッカーを見てくれなくなるかもしれません。
 メディアの向こうに多くのサッカーファンがいるというのがわかっていれば、おのずと誠意ある対応を心がけるでしょうし、それを意識しなくたって自然と真摯な態度が出るはず。いやぁ、こんなことをサッカーのプロ選手に言わなきゃいけないなんて情けない限りです。

大学生選手の本分

 ちょっと話は変わりますが、先週、FC東京の幹部から、長友佑都選手についていい話を聞いてきましたので皆さんにもご紹介しましょう。
 長友選手は現在、明治大学の4年生。高校卒業後、指定校推薦で明大に進み、同サッカー部で活躍、昨年は特別指定選手としてFC東京でプレーしました。今年からFC東京に移籍、U-23日本代表にも選ばれたのは、ファンの皆さんもよくご存知でしょう。
 スポーツ推薦などで大学に入るということは当然、大学がその学生を必要としているから入れたわけで、在学中に別のクラブに移籍されるのは大学としては不本意なこと。ましてや、プロになるために、あっさり大学を辞めてしまうということは、大学にとっては必ずしも好ましいことではありませんよね。
 長友選手はプロサッカーの活動をしながら、明大の学生として勉学にも励んでいる。特筆すべきところは、所属していた明治大サッカー部の監督もOBも、彼がJクラブに移籍することを快諾してくれたということ。というのは、長友選手は学業にもしっかり取り組んでいて、3年生でかなりの単位を取得し、プロになっても4年生の一年間で十分単位を取れると、学校側も判断したからなんです。
 特別指定選手制度で多くの大学生選手がJリーグでプレーするようになりましたが、大学生選手は特に、学生としての本分もきちんとわきまえていてほしいですね。もちろん、途中でプロに転向するという選択もあるでしょうが、スポーツ推薦などで入学させてもらっていながら、安易に退学してしまうというのは、大学側にも迷惑がかかることだし、あとに続く学生にも犠牲を強いたり、支障が生じる場合もあります。ですから大学に進む選手は大学4年を全うする前提で、しっかりした心構えで自らの人生を考えてほしいと思います。
 4月12日の東京ヴェルディとの試合で、オウンゴールで決まった得点の際、あたかも自分が入れたゴールだったようにゴール裏のサポーターにアピールしたといいます。もちろん、それはスタジアムの大型映像で映し出され、オウンゴールとしても記録されていますから、彼自身も、見ていた大勢の観客も当然わかっていること(笑)。つまり、長友選手の遊び心とサービス精神がそうさせたわけです。そういう機転というか彼のユーモアで、その場が盛り上がったことは間違いないでしょうし、そのことで長友という選手が多くの人々に印象づけられたのではないでしょうか。
 誤解がないように書き添えますが、私はなにも奇をてらったコメントやパフォーマンスをしろといっているのではありませんよ。中には話すのが苦手な選手だっているでしょう。しかし、誠意があれば、飾らないなりの自己表現があるだろうし、誠実さは自然に表れるはず。
 それには、選手にはプロとして、なぜサッカーで報酬を得られているかということをきちんと認識していてほしい。お客さんやファン・サポーターがあってのJクラブであり、プロ選手なんです。お客さんが来てくれなかったら、選手はお金ももらえないし、TV放送もスポンサーだってついてくれなくなるんです。そこをしっかり肝に銘じてほしい。望むらくは、ピッチ内はもちろん、ピッチの外でも、自分をアピールする術は、プロとして常にイメージしておいてほしいと思いますね。
 サッカーは国際的なスポーツ。能力のある選手は、ヨーロッパや南米など活動する場もチャンスも大きく広がります。国際人として通用する真のプロフェッショナルが数多く台頭してくることを願っています。