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ウィークリーコラム

 今年のGWは、スポーツ三昧だったという川淵キャプテン。家では、家事に勤しみながら、テレビでJリーグのほとんどの試合をチェック。2日と5日はゴルフに出かけ、4日には東京・国立代々木競技場第一体育館で行われたAFCフットサル選手権2008の壮行試合(対フットサルウクライナ代表)を観戦しました。
 さて今週のコラムですが、川淵キャプテンが、先週の審判発言の問題などについて、自らの考えを語ります。

フットサル日本代表に期待

 ゴールデンウィーク(GW)も終わってしまいましたが、五月病になっている人はいないでしょうか。良い季節ですので、適度に気分転換を図りながら、仕事に勉強に精を出してください。
 さて、GWですが、今年は遠出をせずに、ゴルフに2回行き、4日はAFCフットサル選手権の壮行試合を観戦しました。今回の壮行試合で日本は、フットサルウクライナ代表と1日に神戸で1試合、4日に東京に場所を移して一戦を交えました。第1戦は0-3で大敗し、ウクライナに歯が立たない状態だったと聞いていたのですが、4日のゲームは五分五分の接戦で、2-1で日本が逆転勝利し、AFCフットサル選手権での活躍に弾みをつけました。
 サッポ監督を招聘してから、フットサル日本代表のレベルは飛躍的に上がり、2006年には、過去7大会を制覇してきたイランの牙城を崩して日本がアジアナンバー1に。しかし、昨年、再びその王座をイランに明け渡してしまい、今大会はその雪辱に燃えています。スペインのプロチームでプレーする木暮賢一郎や鈴村拓也(元Jリーガー)、小野大輔といった選手が入れば、もっと得点力もアップするでしょうから、ファンの皆さんは大いに期待できると思いますよ。
 AFCフットサル選手権は明後日から5月18日までタイで行われます。FIFAフットサルワールドカップ出場が懸かったこの大会。ファンの皆さんには、是非、フットサル日本代表に注目していただきたいと思っています。

「死ね」が、一人歩き

 さて、先週のこのコラムでも触れましたが、5月1日の報道を見て、ファンの皆さんも驚いたことでしょう。
 4月29日に行われたFC東京対大分トリニータで、大分の選手が、審判員から「死ね」という暴言を受けたと記者に話したことで、翌日、マスメディアでセンセーショナルに報道され、大きな騒動になりました。事実確認が取れない段階で、この「死ね」という言葉が一人歩きし、新聞やTVなどの見出しに使われたのは、審判員はもちろん、サッカー界にとっても屈辱的なことでした。
 我々は今回のことを重く見て、報告書や映像などを綿密にチェックし、審判員や大分トリニータ、相手のFC東京にも事情聴取を行いました。
 映像を見る限りは、西村主審が「死ね」と暴言を吐くほど激高していたとは見受けられず、西村主審本人も真っ向からそれを否定しています。また、発言があったとされる場面では、当該選手のほかに外国籍選手しか近くにいなかったため、本人以外、そういう発言を聞いた者はいません。しかし、その選手が「聞いた」と言っている以上、聞き間違いだったと断言できないのも事実。JFAとJリーグとしては、主審と選手双方の主張を否定しないということで、この件に終止符を打ちました。
 審判員の役割は、ゲームがフェアで白熱したものになるようコントロールすること。その重要な責任を担う審判員が自らアンフェアな行為をしたり、暴言を吐いたりするようなことがあってはなりません。しかし、万が一、そのようなことが起こった場合、選手はクラブを通じてJリーグやサッカー協会に抗議すべきであって、軽々にマスコミに言うべきではない。今回の場合も、選手が一方的にメディアに話したこと自体、フェアではなかったと私は思います。
 また、ここで敢えて苦言を言わせてもらえば、報道する側の皆さんにも、一方の発言を鵜呑みにせずに、十分取材した上で真実を記事にしてほしかった。それをせずに報道したこともまた、公正さを欠いたと言えるのではないでしょうか。実際、そんな発言した覚えのない西村主審としては寝耳に水だったでしょうし、報道を見て非常にショックを受けたことでしょう。
 一旦、記事になってしまえば、烙印を押されたことになってしまいます。殊に、人の名誉や誇りに関わることには十分配慮すべきだと思います。

お互いにリスペクトすることが重要

 もちろん私も審判の判定が常に正しいとは思っていません。人間ですから、間違った判断を下してしまうこともある。選手も同様で、人間がするスポーツである以上、当然ですよね。だから、面白いと思うんです。
 こんなことはありえませんが、もし、審判がジャッジすることをやめて機械に判定を任せたとしたら、サッカーの魅力は半減してしまうでしょうね。いや、半減どころではない、サッカーがサッカーたりえなくなる。それに、判定がつきにくい状況のとき、完全にゲームを止め、映像をチェックして、それから判断を下すなんていうことが、スピードと瞬時の判断・プレーを求められるサッカーに当てはまるわけがありません。
 サッカーではどんな状況でも審判員の判定は絶対です。それが覆ることはない。だからこそ、審判員は、常に冷静かつ客観的でいなければならないし、選手に注意を促す時や判定を出す時、言葉遣いや態度に細心の注意を払わなければなりません。つまり、選手をリスペクト(尊敬)し、十分コミュニケーションをとりながらゲームをコントロールするということですね。
 一方の選手も、審判員に敬意を払いつつ、プレーに集中すべきです。そもそもサッカーでは試合中、審判に抗議することは認められていない。それがサッカーだということを肝に命じ、ひたむきに戦いに挑むべきなんです。
 最近のJリーグを見ていて非常に腹立たしく思うのは、ファウルや警告に値するプレーをしたにもかかわらず、あたかも審判員のレベルが低いかのように観客にアピールする選手がいること。それは、サッカーの価値やステイタスを下げることになるし、観客に不快感を与え、Jリーグの試合運営にとってもプラスにはなりません。
 大体、試合中に些細なことで選手が審判に抗議してプレーが止まってしまうのは、観ている人にとってはイライラすること。そのせいで、テレビのスイッチを切るという人も実は非常に多いんです。選手も審判員もサッカーの発展を担う重要な存在。みすみすファンを失うような行為はしないでほしいですね。
 プレーを流すことで選手との軋轢を避けることにもなる。
 今回の騒動が非常にセンセーショナルだっただけに、選手やチームに与えた影響も大きかったようです。私も3日に行われたJ1リーグを隈なく見てみたのですが、クラブが選手に対して注意を喚起したのでしょうね、ほとんどの試合で抗議するシーンが見られなかった。それに、審判の笛の数もいつもよりは少なかったような気がします。見ていて実に清々しかった。
 アンフェアなプレーを許さないことが第一義ですが、審判員が、プレーを止めずに流すことで選手との軋轢を避けることになりますし、ゲームが滞りなく展開すれば、選手も文句を言う暇がなくなる。それに、選手自身だって、文句を言わない方が気持ちよくプレーできると思うんですけどね。審判員もゲームをスムーズにコントロールしてくれるわけだし・・・。そういう、互いの信頼関係が結果的にスピーディで迫力あるゲームへとつながるんです。
 とにかく、審判員も選手もともに尊重し合い、コミュニケーションをとっていたら、今回の騒動は起こらなかったはず。今回の件が“禍を転じて福となす"で、選手が抗議することをやめ、激しくもフェアで清々しいゲームをしようという機運が高まればと期待しています。

※写真はイメージです。