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ウィークリーコラム

 2010FIFAワールドカップアジア3次予選の3戦目となるオマーン戦を6月2日に控え、日本代表は明日、強化試合となるキリンカップコートジボワール代表戦に臨みます。ワールドカップ出場を見据え、日本代表がどんな戦いを見せるのか、皆さんも期待を持って見守っていただきたいと思います。
 さて、今週のコラムは先週に続き、“選手のプロ意識”について川淵キャプテンが語ります。

 先週の日曜日、鹿島アントラーズの選手が酒気帯び運転の疑いで茨城県警に検挙されるという事件がありました。飲酒運転については、サッカー界を挙げて撲滅運動に力を入れてきただけに、残念でなりません。この場を借り、あらためてお詫び申し上げます。
 今年に入ってからサッカー界の不祥事が度々起こっており、忸怩たる思いを拭えません。全体的に箍(たが)が緩んでいるとも言え、関係者を含めてもう一度、身を引き締め、再発防止に取り組んでいかなければならないと考えています。取り急ぎ、JFAとしては47都道府県サッカー協会に対して、あらためて注意を喚起する文書を送ることにしています。

無用な抗議

 先週土曜(17日)、J1リーグの浦和レッズとガンバ大阪の試合で、サポーター同士が小競り合いを起こし、ケガ人が出る事態に発展してしまいました。負傷した人には心からお詫び、お見舞い申し上げます。
 このトラブルは、G大阪の選手が円陣を組んで勝利を喜んだことが引き金になって起こったことで、試合の前にもG大阪のスタンドから水風船が投げられるなど、不穏な空気が流れていたといいます。幸い、死傷者が出るなどの大惨事にはならなかったものの、大勢の人が集まるスタジアムでは、ちょっとしたことが大事故につながるケースもありますから、関係者はもちろん、選手も自分の行動や言動に十分配慮してほしいと思っています。
 G大阪はなかなかホームで勝てず、この試合でようやく勝つことができ、しかも相手が首位をひた走る浦和だっただけに、嬉しさもひとしおだったのでしょう。とはいっても、敵地で無防備に勝利を喜んだり、負けたチームを慮ることをしない言動は挑発行為ととられかねず、世界のサッカーから言ったら非常識なこと。そういったサッカーの常識やフェアプレー精神がなおざりにされているのは、非常に由々しきことだと思っています。
 話は1980年代後半に遡りますが――。日本サッカーリーグ(JSL)の1987/88シーズンで、ヤマハが無敗で初優勝したんです。この優勝に大きく貢献したのがアディウソン(FW)というブラジル人選手でした。非常に有能なプレーヤーだったのですが、彼は審判の判定にいちいちクレームをつける選手だったんです。チームの中心的な選手だっただけにその影響は大きく、彼が執拗に抗議することで、他の選手も冷静さを欠いてしまい、次の年からチーム力が落ちていったのを印象深く憶えています。
 今のJリーグもそういったケースが見受けられないでしょうか。以前、問題になった審判員の「死ね」発言疑惑の騒動もそうですが、試合中の抗議に何も罪悪感を持たない選手のプロ意識の欠如が、サッカーそのものに歪みを生じさせないだろうかと危惧しています。
 5月20日の朝日新聞で潮智史記者が、「反則のたびに無用な抗議を繰り返して警告をもらう愚かさ」と記していますが、レフェリーに文句ばかり言う選手がいると、それが選手たちのイライラを高じさせ、チーム全体をおかしくしてしまうんですよね。現役時代、ドイツ人のクラマーコーチが比喩を用い、「殺し屋の冷静さを持って相手と戦え」と、よく我々選手を鼓舞していましたが、激しいプレーの裏には冷静さが必要です。
 当然、審判員の技術向上も重要な課題ですが、選手が審判員に抗議したところで、判定は覆らないんです。ルールでも許されていない。それがサッカーであることを選手がもっと肝に銘じて試合に臨まないと、レフェリーもコミュニケーションをとれず、ゲームの質も下がる。さらには、サポーターの不満やイライラを助長させ、暴徒化につながらないとも限りません。

プロ選手として、高い意識を持て

 少し前のことになりますが、東京新聞で連載している「サッカーの話をしよう」(5/14)で、筆者の大住良之氏が、「Jリーグの試合で深刻な負傷でもないのに痛がって倒れたままの選手が何人もいる」と指摘していました。
 先進国では有能な選手は小さい時から“地域の代表”として試合に出ているという意識が強いのか、「試合中、些細なことで倒れるのはサッカー選手として恥」という文化が根づいていると思います。ファンも成熟して、そんなひ弱な選手はサッカーをする資格がないと言わんばかり。そういう選手の甘えを許さないですよね。
 大住氏が言う通り、プレミアリーグなど、欧州のサッカー先進国のリーグでは、ファウルを受けて痛がって倒れたままでいる選手をほとんど見かけません。ところが、日本では多くの選手が、いつまでも横になったままで、「レフェリーが寄ってきて何か話すと、平気な顔をして立ち上がる」(大住氏)。
 日本で高い意識を持ってプレーしていた選手といえば、中田英寿選手がその筆頭に挙げられますが、彼は倒れないばかりでなく、無用に審判に異議を唱えることもほとんどしなかった。いっときもプレーを止めたくないという高い意識で、黙々とプレーしていましたね。そのひたむきな姿は、多くのファン・サポーターの目に焼きついているのではないでしょうか。中田選手のような手本になる選手が身近にいたにもかかわらず、それを見習う選手がいないのは残念でなりません。
 選手の抗議が多いので、ファンの皆さんの多くが “日本の審判員はレベルが低い”という先入観を持っているかもしれません。全ての審判員が常に正しい判定をするとは限りませんが、レベルアップしているのも確かです。人間がするスポーツなのですから時に失敗もある。それは選手も同様ですね。そういったことを含めてサッカーであると理解していただきたいと思います。
 ファン・サポーターもサッカーの発展を担う重要な存在。選手の非紳士的行為や甘えを許さず、厳しい目を持って選手を見守り、育ててほしい。そして、子どもから高齢者が安全に快適にサッカー観戦できるよう、また、世界に誇れるスタジアム環境を維持すべく、その環境づくりにも力を貸していただきたいと思っています。