“なでしこチャレンジプロジェクト”

日本サッカー協会が女子サッカーに関わるすべての人々に向けて発信した『なでしこビジョン』。その中のひとつに「2015年、日本をFIFAランキングトップ5にする」という目標がある。
近年、女子サッカーは年齢によって3つのカテゴリーの世界大会が行われるようになり、各国もその強化を進めている。昨年、日本は北京オリンピック、FIFA U-17女子ワールドカップ、FIFA U-20女子ワールドカップの全ての世界大会に出場し、連動した流動的なサッカーで世界から高い評価を受けた。しかし、FIFAランキングトップ5に入るためには、さらなる成長が必要とされる。『なでしこビジョン』の実現のため、次のロンドンオリンピックへ向けた新たなチームづくり始まった。
代表チームの強化には、次々とタレントが排出されるような環境が必要であり、そのタレントの発掘・養成という課題にトライする活動が『なでしこチャレンジプロジェクト』だ。このプロジェクトの最大の特長は、なでしこジャパンとの合同トレーニングが設定されていること。年に2回実施され、代表選手と一緒にトレーニングをすることで、プレー面はもちろん、メンタル面においても強い刺激を受ける。また戦術面の理解も深まり、所属チームに戻ってそれらをフィードバックすることで、所属チームにも良い影響を与えようという狙いもある。
2007年にスタートした“なでしこチャレンジプロジェクト”は今年で3年目に入った。当初は、なでしこジャパンと一緒ということで、緊張で自分の力を発揮できなかったり、参加することだけでどこか満足しているような選手も見られた。しかし、今年の2月に行われたなでしこジャパンとU-19女子代表との合同トレーニングでは、なでしこチャレンジプロジェクトの参加メンバーの目の色が違った。
「なでしこジャパンとは18名に入った選手を指す」――。
なでしこジャパンの佐々木則夫監督が発した言葉は、なでしこジャパン入りの厳しさを示唆した。
従来、代表チームの新チーム始動時には、候補者を含めて通常より多い人数で行われることが多い。しかし、このときになでしこジャパンとして招集されたのは北京オリンピックのメンバーを軸に選出されたわずか11名。澤穂希、荒川恵理子、宮間あや、阪口夢穂らの海外移籍組は海外リーグの試合準備のために不参加となったが、あえてその分の追加招集はされなかった。それに対してなでしこチャレンジプロジェクトのメンバーは30名。その中にはなでしこジャパンとしてプレーした経験豊富な選手も多く、代表選手として招集されても不思議ではない選手も名を連ねていた。なでしこチャレンジプロジェクトはまさに「なでしこジャパン入りを狙うための場」という位置づけを明確にした。
プロジェクトの監督を務めた吉田弘監督は言う。「何ができて、何ができないのか。まずはピッチで感じ取ることが大事です。選手の中にはプロジェクトで初めてトライするトレーニングも多いと思います。フィジカルトレーニングも含めて、自分に何が必要なのかを理解する。やらされていてはダメです。そして最も重要なのは“継続”。ここではできても、自チームに戻ったらまた元の状態になってしまう。それでは意味がないんです。例えば、この日はフィジカルをやる日だと決める。チームトレーニングを考えながら自分でプランニングはできるはず。サッカーはいきなり上手くなることはありません。でも一日何センチかでも前進していけば1年後には大きな成長となって表れてきます。それが重要なんです」。
プロジェクトの最終日、14名の選手が選出された。この14名は引き続き、なでしこジャパンのトレーニングキャンプに参加することになり、代表入りのチャンスが与えられた。“新生なでしこジャパン”スタートと同時に、なでしこチャレンジプロジェクトはそのポジションを明確にし、新たな一歩を踏み出した。
文/早草紀子









