~ユニバーシアード女子代表が世界へ挑む~

2年に1度開催される大学生のスポーツの祭典、それがユニバーシアード大会である。今大会は6月30日からベオグラード(セルビア)で開幕する。前回大会で屈辱の下位順位決定戦に回ってしまった悔しさを晴らすべく、ユニバーシアード女子代表が決戦の地へ旅立った。
本大会を前に6月25日、静岡で行われた直前合宿に臨んだユニバーシアード女子代表。悲願の金メダルを獲るため、20名の選手が最後の調整を行った。国内で強化にあてることができるのは移動日を含めてわずか4日。合宿は前回同様"ハードワーク"をテーマにピッチ内外でわずかな時間も惜しんで共通意識を高めていった。
本大会ではフィジカルに長けた選手に競り勝たなければならない。それと似た状況を生み出すため、清水エスパルスのジュニアユースや常葉学園橘高等学校男子チームとの合同トレーニングを敢行した。高校2、3年生も混じるチーム。テストマッチの前には「ユニバー本大会に向けて絶対勝つぞ!」円陣を組んで気合を入れる。試合はフィジカルに勝る高校生チームがイニシアティブを取り、太田真司監督が要請した通りに、DFの裏を狙うロングパスが繰り出されるが、ユニバーシアード女子代表は粘り強く応戦する。相手に抜かれても立ち上がり、再びその背中を追いかけてスライディング――スピードや高さでは確かに劣るが、決して諦めないプレーで自陣を守り、一瞬の隙をついてゴールを奪う。フィット感とポジションの最終見極めを含め、選手を入れ替えながら45分ハーフに臨んだユニバーシアード女子代表。終了のホイッスルが鳴った直後、3人の選手が思わずグランドに膝をつく。テストマッチとは思えないほどの高い集中力で戦い抜く姿がそこにはあった。
「選手たちは日々成長しています。そこはさすがに無理だろうと、傍から見ていても思うほどの距離でも諦めずに走って体を寄せにいく。そこまで彼女たちが頑張れるのは、きっと彼女たち自身が"自分たちにはまだ力が足りない"と、いい意味で自覚しているからではないでしょうか」こう語るのは太田監督だ。テストマッチの間、主審をしながら選手たちの意識を感じ取っていた太田監督。サイドからは堀野博幸コーチや黒澤尚GKコーチらが全体を見ながら細かい修正を加えていく。本大会では一日おきにゲームが組まれ、どんな結果であろうと、順位決定戦を含めて6試合を戦わなければならない。暑さと連戦から疲労が蓄積され、思わぬ事態も起こり得るのがユニバーシアード大会だ。固定メンバーで戦える大会ではない。すべての選手が主力として戦えなくては勝ち上がってはいけないのである。「キツイというのは当たり前なんです。そこからの踏ん張りが勝敗を分ける。そういう点では負荷をかけるというのは意識的に行っていますね」(太田監督)。この日、そんなチームの柱となるキャプテンと副キャプテンが発表された。キャプテンの岸星美が「自分が一年生で出場したときはポンっとチームに入って自分のプレーをやるのが精一杯でした。今回は全く逆の立場。長い大会ですから、気を抜くところは抜いてメリハリをつけながらポジティブにチームをまとめていきたいと思います」と語る。一方、FIFA U-20女子ワールドカップを経験して今後の成長が期待される副キャプテンの小山季絵は「この大会は大学生にとっては目標となるもの。世界を感じて自分のチームに戻ってくればチームも、果ては大学サッカー界もきっと強くなると思うんです。簡単ではないけど、しんどい時こそサッカーを楽しみたい。ポジション的にも結果を残せばチームの勝利につながりますし、毎試合ゴールを目標にします」と大会への意気込みを語った。
グループDの日本は30日に初戦を迎える。アイルランドが相手だ。「ポイントは初戦。やはり先制点が欲しいですね。前回大会も追う展開でやられてる。追いかけるのは焦りも出ますし、自分たちのペースを崩すので絶対に避けなければなりません」と太田監督は語る。その後、中一日でハンガリー、フランス戦と続く。参加16チームが4グループに分かれて戦う予選グループ。各グループ上位2チームが準々決勝へ駒を進めることになる。「6試合ですからね…。戦力や体力を"計算する"方法もあるのでしょうが、あえて"トライ"していきたいんです。選手たちだけでなく、私自身もこの舞台でのチャンスとプレッシャーを楽しもうと思っています。もちろん、狙うはまだ日本が手にしていない金メダルです」(太田監督)。
北京オリンピックでとてつもないプレッシャーと逆境の中で戦った一戦一戦が、なでしこジャパンを強く高く飛び立たせた。初戦に勝利し、追い風を掴めばユニバーシアード女子代表も大きく羽ばたく可能性は十分にある。上手いチームが常に勝つ訳ではない。勝ったチームだけがその強さを認められる。"絶対に諦めない"――すでに大きな強みを彼女たちは持っている。それをすべてのピッチで貫くことができるか。大学生の等身大の挑戦が始まる。
文/早草紀子









