
AFC U-16女子選手権が11月4日~15日、タイのバンコクで開催された。この大会は来年、トリニダード・トバゴで行われるFIFA U-17女子ワールドカップの予選を兼ねており、上位3チームにその出場権が与えられる。
日本はグループBを2位で決勝トーナメントへ進み、準決勝で韓国に惜敗。回った3位決定戦では、予選リーグで一度敗れたオーストラリアとの再戦に勝利をおさめ、3位に入った。今回は、この大会での日本の戦いを振り返ってみたい。
吉田弘監督は、30℃を超えるタイの気候を考慮し、疲労蓄積や体力・持久力の低下に対するリスクをできる限り回避しようと、2チーム編成でこの大会に臨んだ。初戦のチャイニーズ・タイペイには16-0の大勝。2戦目の中国との試合は初戦と大幅にメンバーを変え、新たなチームで戦った。決勝トーナメント進出へ大きく影響を及ぼすこの戦いも3-1で勝利し、ここまで日本はグループ首位につけた。予選リーグ最終戦の相手は、こちらも連勝中のオーストラリア。勝ったチームが首位で決勝トーナメントに進むことができる。日本は再び、メンバーを入れ替えて臨んだ。開始8分、尾田緩奈のゴールで日本が先制点を挙げる。その後も攻撃の流れは日本にあった。日本ペースで展開されるかと思った矢先、14分にミスから同点を許すと前半のうちに3失点を喫してしまう。後半に入り、何とか持ち直したが、オーストラリアの懸命の守備の前に日本のゴールは生まれず。初めての黒星となってしまった。
決勝トーナメントは中2日。日本が戦う相手はグループA首位の韓国だ。とにかく気迫溢れるチーム。負けずに対抗したい日本だったが、先制したのは韓国だった。GKからのボールをつながれての失点。日本もチャンスを何度も組み立てるがここでも35℃にまで上昇したピッチではパフォーマンスも思うように発揮できない。ゴールネットを揺らすことなく、結局この1失点に泣き、日本は最後の望みである3位決定戦にすべてを託すことになった。日本がベストパフォーマンスと呼べる試合をしたのはこの3位決定戦だったといっていいだろう。後がない日本。これまで不発で、ゴールに飢えていたエース・京川舞が4得点の大爆発を見せる。すると2列目からも猶本光も積極的の攻撃に絡み1得点。交代で入った高木ひかりもゴールを決めるなど怒涛の攻撃で6得点を挙げた。献身的な守備陣にも支えられ、歯車がかみ合った日本は最後のチャンスで世界大会への出場権をもぎ取った。
「最後は気持ちしかないような試合でした。気持ちと技術と心技体が揃わないと3位決定戦のようなプレッシャーのかかった試合はモノにできません。その点は選手に話しました」と語るのは吉田監督。技術面では文句なしで大会トップレベルにある日本。しかし、ここぞというところでその実力が発揮できたかと問われれば、答えはノーだ。そこにはメンタルの問題も多分にあったように見えた。「ここで決めたい」という思いが強ければ強いほど、チームのバランスはどんどん崩れていった。それを感じ取った選手たちも自分たちから率先して話し合いを持ち、なんとか突破口を見出そうと必死にもがいていた。そして最後のチャンスとなった3位決定戦でその壁を破ることができたのである。自分たちの力で乗り越えたことは何にも変えがたい収穫だった。それでも吉田監督は最後までわからなかったという。「オーストラリアは身体が大きい分、5試合を戦う上でダメージも大きかったのだと思う。最後は日本より相手の方がマイナスな状況になってしまっただけ。3-2となっていたら展開は変わっていたかもしれません」(吉田監督)。ワールドカップとなれば、連戦はもとより、余裕を持って戦える試合など一つもない。すべてが全力で臨まなければならない。技術だけではとうてい乗り切れない。「体力もそうですが、特にメンタル面は非常に大切だと思います。もちろん、技術も向上させながら、それ以外のところも“世界を勝ち抜く”強さが必要だと感じました」(吉田監督)。
崖っぷちとなった状況でも常に「すべてが経験」と選手に考えさせる姿勢を貫いた吉田監督。暑さやピッチコンディション、勝利へのそして出場権へのプレッシャー、不振、疲労・・・様々な体験が選手たちを待ち構えていた。それを一人ずつが受け止め、考えを出し合った。自分たちはどう進んでいくべきか、チームとして成長するためにあらゆることに思いを巡らせる機会がトーナメントの中に詰まっていた。その答えが結果となって跳ね返ってくる現実の厳しさも痛感した。苦しい闇の向こうにあるもの、選手たちはそれをほんの少し垣間見たのではないだろうか。「この仲間ともう一度世界で戦うために」。戦い終えた選手たちには、しっかりと次の目標が定められていた。苦しかったからこそ、悔しかったからこそ、来年の世界の舞台に向けて成長への伸びしろは膨らむ。1年後、どのようなプレーを世界の舞台で見せてくれるのか、そのプレーが見られる日を楽しみに待っていよう。
文/早草紀子









