チーム創設に携わった澤口章二(現レディースマネージャー)さんに話を聞きました。
サッカーをしているのは男子だけではありません。そしてJリーグの理念を実現させるには、女子サッカーの普及を目的した地域貢献も必要だと感じ、女子チームの活動をスタートさせました。すでにサッカースクールなどを展開していましたから、ハード、ソフト面はそれを活用することができました。この活動が将来のサッカー(スポーツ)への理解者、仲間の拡大、ジェフファミリー(スタジアムへの観戦)の拡大につながっていけばと思っていますし、またここでサッカーに触れた選手から、なでしこリーグやなでしこジャパンへチャレンジする選手が育ってくれたら、それもうれしいですよね。
Jリーグに参加する条件の一つに下部組織(男子のU-12・U-15・U-18)を持つことが挙げられています。女子サッカーに関しては後回しとなってしまうことも多い中、ジェフではサッカーをしているのは男子だけではないと考え、地域のミセス(ママさん)チームに、コーチを派遣していました。それがジェフの女子サッカーの始まりなんですが、そのミセスチームに中学生以上の女子選手を入れようと募集したんです。
当時は一部小学生も混じっていましたが、サッカーをしている子、サッカーをやりたい子(未経験者/他のスポーツ経験者等)が集まって活動していました。その後、1995年に関東女子リーグに参戦し、また全日本女子選手権に初出場するなど経験を重ね、選手を入れ替えながら、トップチームはなでしこリーグへ参戦するまでになりました。
ジェフレディースの転機は、2004年にトレーニング場所を千葉県浦安市内から現在の習志野市内に移転したときです。このとき、小学生年代の女子だけのスクールを開設しましたが、思ったほど人数は集まりませんでした。そこで千葉県において中学生年代が活動する場所が少ないことを考慮し、翌年から新中学生の募集を開始したんです。当時はセレクションを行わず、広く選手を受け入れていましたが、2008年頃から参加希望者が多くなり、練習会、セレクションを実施するようになりました。
現在では総勢62名がトレーニングを行っています。大前提として、ジェフレディース下部組織の活動は千葉県下の女子サッカーの普及活動の一環であり、強化ではありません。とはいっても、トップチームになでしこリーグに参戦しているジェフレディースがあり、トップチームと同じ場所でトレーニングを行っているので、彼女たちの存在は下の年代の選手にとっては憧れのシンボルとなっています。
毎年、会社としての費用対効果が検証されます。会社方針として、やはりJリーグトップチーム、男子チームの強化・育成が最優先です。そんな中で、女子トップチームがなでしこリーグに参戦したり、U-18以下のトレーニングを充実させるためには、レディースチームへのスポンサー収入がないと活動を維持していくことは難しい。そのために、選手の受け入れ人数を増やすという努力も必要ですが、コーチ一人の目が行き届く範囲は限られているので、バランスが難しいですね。
“地域に愛されるクラブ”を基本に、女子サッカーについては、小学生年代はできるだけ地元のチームで活動することが好ましいと思っています。そして新中学生年代(小学6年生から)になると、定期的にジェフが主催している練習会などをどんどん活用してほしい。その他にも地域のサッカー教室、地域イベントに積極的に参加し、県下の女子チームと支援・協力しながらチーム作りを行っています。
私たちはあくまでも、強化ではなく、普及ということに重きを置いていますが、それでも日々のトレーニングの成果を試すために試合をすることはとても大切ですし、それこそサッカーの醍醐味でもあります。最初はU-18だけのくくりでしたが、人数も増え、試合環境を整えるためにも、身体がまだ成長途中にある小学生と中学1・2年生はU-14、中学3年生と同等の力のある選手はU-15、そして高校生を中心としたU-18と、ときには目的に合わせてトレーニングを行います。それぞれの成長に合わせてトレーニングができるのも、すでにジェフに男子で培ったノウハウがあるからこそだと思っています。
ユース年代からトップチームまでのトレーニングをわずかな人数のスタッフで見るのは難しいものです。サッカー環境をよりよくするためには、コーチの人数を増やしたい。でもそれには運営資金も必要です。結局は選手の数が揃うまではコーチの数を増やすことはできませんでしたが、現在は一人が20名程度の選手を受け持つという形に落ち着きました。
これからも、千葉県下の女子サッカーの普及に努め、なでしこリーグに参戦することをはじめ、その地域の女子サッカーのシンボルとして活動していくこと。また、Jリーグのクラブはサッカー仲間、そのファミリーを拡大することでクラブへの理解者、支援者、観客が増える要因が生み出されていきます。その手段の一つに男子サッカーから女子サッカーへの普及活動を立ち上げることは重要であると考えています。
チームの立ち上げから指導にあたり、現在はトップチームの監督を務める上村崇士さんにも話を聞きました。
そうです。とにかく、僕自身が“自分のチーム”というものが欲しかったんです。初めての経験ですから、いろいろな方に話を聞きに行きましたね。それまでは同じジェフというチームにいても、女子チームがあることすら知らなかった。日々のトレーニングも中学生男子のトレーニングが終わって片隅でやっていたり遠征費なども自腹だったりと、そういうサッカー環境でサッカーを続けている人が身近にいるというのには正直驚きました。だからこそ、なんとかしないといけないな、と。
最初に取り掛かったのは、ジェフという組織に対するアピールというのでしょうか。どんどん認識してもらった方がいいと思ったんです。すでに、僕に話が来たときには大人に交じって中学生が2、3人いたので、もっと人数を確保してこの年代を伸ばして行こうと思いました。
育成年代は成果がすぐには表れにくいのですが、それでも人数は6名位からスタートして、25名、30名と増えて行きました。最初は11人制のサッカーの試合には出ることができませんでした。そんな時は5人制の大会に参加したりしていましたね。その子たちが今、高校3年生になっています。大会では勝つこともあれば負けることもある。年齢も住んでいる場所もバラバラの人達との出会いや、これまで指導を受けてきたコーチとの別れもある。いろんな経験を積んで、良い意味で生意気になった(笑)。そんなところにも成長を感じますね。
グラウンドスペースの問題や指導者の関係で現在は3名のコーチで約60名を見ています。本当は受け入れられる人数を増やすためにも指導者を増やしたいところではあるのですが、そこはこれからの課題です。
育成年代のチームを立ち上げた2005年は、ちょうどなでしこジャパンが世の中に認知され始めて、女子サッカーに流れが傾きかけていたということはあります。あとは、千葉県には女子チームが極めて少ないということ。そして何より、“ジェフ”という看板は大きかったですね。
同じ人間で、同じサッカーという競技をやる訳ですから、女子だからとそんなに何かを大きく変えようとは思いません。でもその中で僕が心掛けたのは、選手と話す時間を多く持つということでした。もしトレーニングが2時間だったら、選手と話す時間を前後に1時間でも2時間でも作る。それ以外の時間でも、時間が許せば携帯で話しをしたりもしてました。今から思えば、よくエネルギーがありましたね(笑)。男子と女子で大きく異なる点があるとすれば、こういったコミュニケーションの取り方です。女子は純粋な分、指導者に頼りすぎるところがあったり、納得するまできちんと相手を理解できるまでは心を開かなかったり・・・。もちろん個人差はありますが、なかなか慣れない部分もありました。しかし、結果、こういった道を取って僕はよかったと思っています。
チームトレーニングレポート


チームのトレーニングが行われるのは、平日の週3回。加えて週末にトレーニングマッチや公式戦が入ってくることもあります。時間は18時からの約2時間。ナイター設備のある人工芝のピッチで、約60名の選手がトレーニングに励んでいます。
この日はテストなどの関係でU-18年代はお休みで、それ以外の約40名がボールを追いかけていました。ウォーミングアップを終え、U-15、U-14に分かれてのトレーニング。U-15チームは狭いエリアの中で5対2、5対5が中心。ポジションチェンジをしながら、広く展開する動きを繰り返します。そしてGKを入れながらフィニッシュまでを意識するプレーを織り交ぜたミニゲームを経て、最後はGKを入れてのシュートトレーニングで締めくくりました。
「強い相手と試合しているときとか、ドリブルで抜いたり、ボールを奪ったりする瞬間がとても楽しいです! 今は守備のトレーニングをやっていますが、前線のところでもしっかりと得点に絡むプレーをしていきたいです」と、中学3年生の大竹陽日選手。また、クリスチャーノ・ロナウド選手が大好きという中学2年生の井原美波選手も、「自分で考えて、チーム全体を動かすことができるようになりたい。自分に限界を築かずにやれるとこまでやりたいです」と語ってくれました。話をしていて感じたのは、一人一人がしっかりと自分のするべきこと、やりたいことを把握していること。コーチや先輩をはじめ、トップの選手など、異なる世代の人達とコミュニケーションを取ることで、いろいろと経験や考え方なども自然に学んでいるのでしょう。
今年の春からチームの指導にあたっている三上尚子コーチは言います。「最初にチームのプレーを見たときに、勢いでプレーをしているので中がごちゃごちゃしているイメージがあったんです。今は、人が動くことでピッチを広く使えるんだということをやりながら、駆け引きや見極めを自分自身でできるようにトレーニングを行っています」。最初はボールを持ったらやみくもに突っ込んでいく固定観念を壊すところから始めたという。そこから対戦する人数を変化させることでシチュエーションを変えて、パスを選ばせる。どんな展開でも同じパスでいいはすがない。“気づく”ことから成長は始まると三上コーチは言います。「まだ数カ月ですが、少しずつ変わってきていると思います。ただ、パスの話をするとパスを多用してしまう。女子はコーチの指示にかなり忠実になりがちです。そんな中でも自分の良さを組み込むことができる個性のある選手へ成長していってくれればと思っています」。
トレーニングが終わる頃、ピッチサイドではこの後からトレーニングをスタートするトップチームの選手たちがウォーミングアップを始めていました。すぐそばで目標となる選手たちがトレーニングをしているという環境、刺激がないはずがありません。またオフシーズンになると、トップチームの選手の自宅へ何人かずつU-18チームの選手を宿泊させることもあるのだとか。上の立場には責任の意識が芽生え、下の者には新たな希望が生まれます。さまざまな角度から、貴重なエッセンスが散りばめられている日々。これを選手たちがどう受け止めて、生かしていくのか。数年後の成長がとても気になる、そんなジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18のトレーニングでした。


