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スペシャルインタビュー

 2008年夏の北京オリンピックで、日本女子代表最高の成果である4位入賞から約3年。その間、佐々木則夫監督の下、なでしこジャパンは東アジア選手権連覇、アジア大会金メダル獲得などの成績を残し、着実にチーム力アップを重ねてきた。そして今年6月、FIFA女子ワールドカップ・ドイツ大会に挑む。6大会連続出場の日本は、全16チームが競い合う4年に1度の世界大会で、6月27日のニュージーランド戦を皮切りに、B組でメキシコ(7月1日)、イングランド(同5日)とグループステージで対戦。「大会優勝」を目標に掲げて、北京五輪以上の成果を目指す。大会へ向けて最終準備に入った、佐々木監督に話を訊いた。

Q:日本が4位になった08年の北京五輪以降、今回のワールドカップ(W杯)への長期的な準備は、狙い通りですか?

 そうですね。私自身が北京から継続してチームを見て来ているので、いままでの攻撃・守備にアクションするサッカーというものを、ステップアップしながら来ています。ですので、今回のW杯では選手たちもコーチ陣も、今までやってきたことを存分に見せて、北京五輪以上の結果を出そうと準備しています。

Q:北京五輪でのプレーがその後の3年間のチーム作りのベースになっていることを考えると、あの大会で成果を出せたことは、やはり大きかったと?

 五輪で4位というのは、選手たちの自信にもなりましたし、僕自身もなでしこを導く方向性に脈を感じたなかで、チームの結果が出ている。だから、選手たちも「なでしこのサッカー」の追求に邁進していると思います。

Q:W杯までのステップアップのポイントはどこに置いてきたのでしょうか?

 攻守にアクションするサッカーをする中で、試合中の状況変化に自分たちで工夫しながら「ここはこう対応しなくては」と、自分たちで解決できるチームワーク。戦術的要素や狙いを変えたりするところで、自分たちで判断していけること。ベンチが動く前に、自分たちが察知して対応することです。北京五輪でもそういう状況があったし、チームを率いてきて、まだ、その点には未熟さがあると感じていました。
 ベンチの我々が試合中の変化を感じて対応するまでにはタイムラグがある。その前に、自分たちで判断する。試合のなかで自立することを一番のメインテーマとして取り組んできました。

Q:その取り組みの過程で、昨年の秋にはアジア大会に優勝しました。

 ええ。結果を出したので、それが自信につながっています。状況を的確に察知して対応するというところでは、まだまだ課題はありますが、アジア大会では選手たちが判断してやっていました。厳しい状況の中でもなんとか結果を出したというのは、1つのステップにはなったかと思います。

Q:そのアジア大会を経て、チームの完成度はどのくらい上がったと感じていますか?

 同じことを繰り返しやっていればレベルが上がるかというと、そうでないことがあります。メンバーも変わってきますし、(プレーに)幅を付けて行かなくてはいけないということもある。北京の時に試みた、相手の自由を奪うというプレーも、レベルが上がってはいるものの、ベースアップにするにはまだ足りないと感じることもあります。代表チームは、(クラブチームのように)ずっとチームを見られるというのではないのですが、良くなったところはそのレベルを落とさないように努めています。
それと、我々のスタイルが諸外国に結構知られて来ていて、例えばアメリカやメキシコなどと対戦しても、最近は、相手が我々のやり方をかいくぐろうとしてきています。そのこともあるので、守備の連係はもっと変化を持たせて対応できるように、プラスアルファを持てるようにしていかないとならない。イタチごっこですが、誰が出ても同じように連携連動できるようにしたいと考えています。
 あとは、攻撃で(ゴール前)35メートル内でのコンビネーションを上げていかないと、フィニッシュまで行けません。ボールは奪っていても、相手のブロックを崩しきれないと、強豪と対戦した時には、結果がなかなか出てこないということになってしまいます。いろいろな相手との対戦を経験しながら、確認していきたい部分です。

Q:北京五輪以降、チームの世代交代も課題の1つだったと思いますが、その点は?

 僕はU‐20代表チームもなでしこも見ているので、流れを移行させやすいところはあったと思います。チームの軸になる選手は何人かいますし、気心の知れた選手の中でやるのは、ピッチ外でも活動しやすいとは思いますが、それだけでは、その世代が終わるとチームも終わってしまいます。ベテランと中堅のミックスした、チーム構成することで、引き継ぎが可能になります。なでしこの良さは一致団結するところなので、今のアクションサッカーを体感しながら、ベテランから若手に、伝統的な良さを引き継ぎ、チームも躍動していけます。結果を出すことも大事ですが、僕はそれも非常に重要なこととして、大事にしていきたいと感じています。

Q:海外組の選手が増えてきましたが、その効果はどんなところに出ていますか?

 人に強くなって、闘うところが多く出てきています。欧米勢との対戦では、ドイツやアメリカのリーグ戦で、球際の激しい競り合いを経験している選手がいることは、代表チームにとって重要なことだと思います。
 宮間(あや)や沢(穂希)もそうですが、体を張る、勝負どころの局面でのプレーの質が、彼女たちの場合はアメリカでのプレーを経験して変わってきている。今は、ドイツで安藤、永里、フランスで宇津木がプレーしていますが、そういう部分ではまだこれからかと思います。でも、「うまさ」ではなく、「本当にゴールに向かってゴールを奪うために、体を張るのがどういうことか」という部分で、すでに変化があります。それと、勝負にこだわるというところでは、以前のレベルと違ってきました。練習での球際への動きなどを見ても、それは出ています。

Q:準備の途中で東日本大震災が発生し、国内リーグのシーズン開始が遅れました。代表チームへの影響はどうでしょうか?

 リーグ開始が遅れた分、(大会までに行われる)試合数が減りましたし、計画停電などで満足の行く練習ができなかったというのはあります。でも、間近に公式戦が出来ていないわけではないですし、こういう状況では違う意味で大きなパワーが出てくるものです。それに、なでしこの選手は自信もついていますから、僕はこの点については、あまりナーバスにはなっていません。

Q:グループステージでの対戦相手については、どう捉えていますか?初戦のニュージーランドとは、北京五輪でも初戦で対戦しましたが?

 ニュージーランドは、体格的身体的な特長、高さとパワーを活かすプレーで、最近では結構、自信を持っていると感じます。日本に対しても、ニュージーランド監督の話を耳にすると「フットボールでは難しいかもしれないが、パワーと闘いでは負ける気がしない」と言っている。親善試合でも対戦しましたが、あっと驚くようなCKのシステムを展開したりするので、侮れない相手です。北京五輪での対戦では、日本の選手が「勝ち点3を獲らなければいけない」、「絶対に負けられない」と意気込みすぎて、臆したプレーが増えてしまった面もあったので、今回は精神的なこともクリアして、北京五輪での対戦のようなことにならないようにしたいと思っています。

Q:メキシコはどうですか?

メキシコは、(日本とは)リズムが違う選手が前の方に多い。4~5人はすごくテクニックがあって、試合の仕掛けでも非常に積極的で、そういうタイプとは日本のリーグでは対戦できません。守備はそれほど強くないですが、攻撃になると、ものおじしないで仕掛けてくるので、冷静な対応が必要です。昨年のU‐20W杯で対戦して苦戦したので、リズムの違う相手への準備はしなくてはいけないと考えています。

Q:イングランドは?

 イングランドとは前回のW杯でも対戦していて、一人ひとりのフットボーラーとしてのポテンシャルがすごく高くて質が高い。勝負どころの強さはドイツやアメリカほどではないですが、対戦し甲斐のあるチームです。個人的には、すごく理想的なサッカーをしていると感じています。
 メキシコもニュージーランドも、自分たちのスタイルの試合をするというよりも、我々の試合をよく分析して、こちらの出方に応じたプレーをしてきます。だから、こちらも試合中の変化に応じた対応力がすごく重要になってきますが、そのあたりの準備はこれまでやってきたつもりです。
 北京五輪の準決勝のアメリカ戦では、自分たちが先制したのに、その(1-0リードという)変化にうまく対応できなかった。ドイツとの3位決定戦でも、相手が少し変化させてきた時に、選手たちが動揺してしまって対応できなかった。ですから、この3年間で、試合中の変化に対して選手がどれだけ対応できるかが、大事だとみています。

Q:今回のドイツ大会では成績以外に、どういう成果を得るのが理想的でしょうか?

 この3年間、チームが積み上げてきたものをどれだけできるのか、僕自身、とても楽しみにしています。北京五輪ではベスト4を目指して4位でした。でも、他の上位入賞チームは、みんな優勝を目指していて、その意識の差が結果に出た。それで選手たちとも話して、今回は優勝を狙おうと。我々のサッカーができればメダルは狙えると見ています。
 日本は世界ランク4位になって、グループステージではシード権をもらえていますが、W杯という舞台で「勝つか負けるか」という良い経験をして、12年ロンドン・オリンピックへつなげて行ければいいと思っています。そのためにも、グループステージを絶対に勝ち抜いて、決勝トーナメントに行く。そして、グループステージの初戦から、1試合1試合で自分たちのサッカーをやることに邁進したいと考えています。

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