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スペシャルインタビュー

 6~7月のロンドン・オリンピック、8~9月のU-20女子ワールドカップに続いて、今年3つ目の女子サッカー主要大会となるU-17女子ワールドカップが9月23日からアゼルバイジャンで開催されている。日本は、先日のU-20日本女子監督も務める吉田弘監督の下、アジアチャンピオンとして参戦中だ。なでしこジャパン日本女子代表はオリンピックで銀メダル、ヤングなでしこ日本女子代表はU-20ワールドカップで銅メダルを獲得。U-17日本女子代表への周囲の期待も膨らむところだが、17歳以下という伸び盛りの世代を率いて、3大会目の出場となるU-17ワールドカップで指揮官はどんな成果を求めているのか。

Q:U-17ワールドカップは3大会目ですが、率いてきたチームに違いは感じますか?

 4年前から、GKを含めて、守備は全体の傾向として良くなってきています。GKプロジェクトが出来たりして、(小学校の)低学年代が出来るようになってきた成果だと思います。前回、前々回と見てきて、チーム力ではチーム全体レベルで現在のチームが一番上でしょう。ただ、前回や前々回のような、誰か突出した選手というのはまだいないので、誰にでも可能性があると思っています。楽しみな部分です。

Q:選手にはなにを期待していますか?

 自分の特長を理解して世界大会の場で自分を表現できるか、ということが非常に重要なことだと思っているので、「これが得意」という部分を存分に見せてくれる選手が多く出てきてくれると良いと思っています。

 今回U-20で活躍した選手でも、U-17の時には気持ちは入っていても自分のプレーを出し切れていない者もいました。このチームの選手たちにはこれが最初のワールドカップになりますが、良い緊張感とリラックスでゲームを楽しむことができれば、自分たちのプレーが出来るようになります。そういうところをうまく出してあげるのが私の仕事だと思っています。

Q:前回2010年大会では準優勝でしたが、今回の目標は?

 最低限6試合はやりたいと考えています。6試合やれると、世界のトップクラスと試合ができるので、自分たちがどのくらいのレベルにあるか、立ち位置がはっきりしてきます。良い試合をたくさんやって、その中で最後は優勝できれば良いなと思っています。

 そこには、選手を成長させることと、世界のトップレベルとやるためには何が必要なのかを見極めたいという思いがあります。それに、選手も私も、自分たちがやってきたことが通用するか、確認したい。それと、世界の女子サッカーは、フィジカルや強さだけでなく、女性がやるスポーツとして華麗で観ていて面白いということを、少しでも示すことができればと考えています。

 世界大会で感じたことは、本人たちの「その先」へつながっていきます。内容もそうですが、個人がどのくらい出来たかという積み重ねでしかありません。もちろん、チームのことを考えながらプレーはするけれども、個人をアピールしながらチームのことをやって勝利に貢献してくれたらと思っています。

Q:大会は選手が変化するには、良いきっかけの一つだと?

 そうです。そのきっかけが大きなきっかけになる可能性が大きい。練習試合や親善試合と違って、勝つか負けるかの真剣勝負の中でやる試合で得るものは違います。「こんなことでやられたから、これはちょっと…」と思えるようになればいい。そういう経験ができれば次に生きます。

 選手にはどこかで変わるきっかけがあるものだと私は思っています。その変化のあり方は個人で違いますが。われわれは、いろいろな可能性を秘めた子たちを見て、「この子はこのポジションならインターナショナルで使えるかな」とか「こういうものを持っているから変われるかな」と思いながら選んできていますので…。

Q:そういう選手の変化を見るのが指導者として楽しみな部分でしょうか?

 もちろんです。それが楽しみです。どう変えてやろうか、どう変わって行ってくれるかな、といつも考えています。チームの成績ももちろんですが、私としてはなんとか選手が変わるきっかけを作ってあげられたらいいなと思っています。

 私には、個人を育てなくてはいけないというベースがあるので、子どもたちが(積極的に)やってみて失敗して痛い目にあってもいいかな、と考えている部分はどこかにあります。(一般に)子どもたちの育成でも失敗することが実になってくる。周りの先生や大人たちがすべて御膳立てして、子どもが何もしなくても済んでいるというのでは、いつまでたっても自立できないでしょう。良いサッカー選手を育てるだけではなくて、人間として自立させたいという思いがあります。

Q:個人を育てることに重きを置かれているのは、どういう考えからですか?

 「がんばれ、がんばれ」というだけではなくて、自分の意志で目標を持って頂点になりたいという思いを膨らませてあげないと、スポーツで勝つのは難しいと思っています。ゴルフの石川遼選手を見ていて思うのですが、自分で本当に目標を持った選手は日本人でも世界のトップへ上り詰める可能性があります。でも、スポーツは自分が上手くなりたいとか楽しみたいという、自分の意思が根本にないと絶対に上に行けないものです。ところがそこでチームでプレーして云々というとネックになる。だから、個人がアピールする、自分が上手くなりたいという気持ちをまず出させてあげたい。その中で最低限チームのことをやる、というスタンスをとっています。

Q:先頃のU-20ワールドカップで感じたことは?

 決勝に進んだのはフィジカルの強いドイツとアメリカでした。ドイツと準決勝で対戦して、世界トップの戦いになると、なまじっかの技術ではフィジカルに負けてしまうのだと実感しました。タイトルが懸ったような試合では、より一層の精度の高さが必要です。問題は選手たちがどのくらい実感してくれたかですが、「なまじっかでは通用しない」と分かって、それが財産になってくれれば良いと思っています。

 グループステージからの試合を見てみると、MF柴田やFW西川など、なでしこリーグや大学でのプレーではあまり見られないような個人の特長が見えてきた。そういう発見もありました。それと、お客さんの反応が(負けたドイツ戦が)終わっても温かくて、ありがたかった。なでしこの良い影響を受けて純粋に必死になってやっている選手たちの姿に反応してくれたのでしょう。だから、必死さなど良い部分は失わせたくないですね。

Q:なでしこジャパンの澤選手や宮間選手のような存在になれる選手の台頭は?

 まだ時間がかかるかと…。なでしこジャパンの澤や宮間は、サッカーに対する思いがすごく大きいのではないかと思うんです。そういう思いが膨らんだまま、日々取り組みを続けていく。その成果が少しずつ積み重なって、例えば宮間のキックの質のように変わって行けるのではないかと。だから、ある程度のレベルまで行っても、その最後の頂点のところは時間をかけてやり続けていかないと、ボールを奪う瞬間の速さとかキックの精度など、ちょっとした差だけれどもその差は埋まらない。それが一流とのレベルの違いじゃないかと…。澤や宮間のようになれる可能性は、みんなにあると思っています。ただ、そのちょっとした差をやり続けるには、まだまだ積み重ねが必要でしょう。

Q:2003年ワールドカップから女子を指導してきて変化は感じますか?

 昔は女子がサッカーをやれる場所が相当限られていたのですが、それに比べると、最近ではプレーできる場所が増えてきたので、選手の数も少しずつ増えてきたのではないかと…。でも、アメリカの女子サッカー人口などと比べると、まだ開きは大きい。小学校の低学年や中学生年代が増えてくれば、日本が世界のトップで技術的に引っ張って行けるようになるのではと思っています。

Q:ありがとうございました。