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スペシャルインタビュー

 2014年1月、日本が世界の大舞台に挑む、勝負の年が始まった。6月に開幕するFIFAワールドカップ・ブラジル大会で、日本代表チームはアルベルト・ザッケローニ監督体制での4年間の集大成を披露するが、指揮官は昨年11月の欧州遠征の2連戦でチームがさらに大きく伸びたという手ごたえを得た。昨年12月には本大会グループステージでの対戦相手も判明し、日本はコートジボワール、ギリシャ、コロンビアと決勝トーナメント進出をかけて戦うことになった。大会開幕を約半年後に控えて、チームの準備状況や対戦相手などについて、イタリア人監督はどう考えているのか。話を訊いた。

Q:いよいよワールドカップまで半年を残すところになりましたが、現在の心境は?

 ポジティブです。この3年間余りでのチームの成長を実感していて、特にチーム力、チームとしてのパーソナリティ、プレーの組織力という点が急激に伸びていると感じています。ただ、世間では昨年11月の欧州遠征の結果(オランダ戦△2-2、ベルギー戦○3-2)で、日本はどんな相手にも勝てると感じているようですけど、それはちょっと違うと言いたいですね。
 もちろん、私自身、このチームには非常に期待しています。日本が心身ともに100パーセントのコンディションで試合に臨むことができれば、世界トップ10のチームと対戦しても引き分ける可能性はありますし、時には勝つ可能性もあると思っています。
 でも、60パーセントのコンディションでは勝ちや引き分けに持ち込める力は、まだありません。ですので、本大会までの6ヶ月の目標は、いかにしてチームを100パーセントの状態にして本番に合わせられるかです。

Q:昨年11月の欧州遠征時に、チームの完成度は75パーセントと言っていました。残り25パーセントの部分とは?

 11年の札幌での韓国戦や、(12年6月の)ワールドカップ最終予選のオマーン、ヨルダン、オーストラリア戦、昨年のコンフェデレーションズカップでのイタリア戦、それと11月遠征のオランダ、ベルギーとの対戦で見せたような良い戦い方を、90分間続けて出せる力をつけることです。
 オマーンやヨルダン戦では60分間力を出せれば勝てました。でも、ワールドカップで対戦するコートジボワール、ギリシャ、コロンビアを相手に、それでは十分ではありません。良い時の試合では、ボールが常に動き続けていて、インテンシティ(プレーの強度)を出せています。それが出るか否かで私たちのプレーの効果が変わるので、いかにボールを動かすかがポイントになります。

Q:この3年半で、チームが伸びたと感じたのはどの時点でしたか?

 このチームは、まとまった時間を使ってトレーニングして、しっかり準備できた時には成長していると感じますし、また、チームにフィジカルコンディションの良い選手が入って来ると、成長の度合いが上がります。
 プレー内容で最初に成長の兆しが見えたのは、11年8月の札幌での韓国戦でした。あの試合は特に前半が良かった。でも3-0リードすると満足してしまって、後半は攻め手を緩めてしまったので、その点を怒ったのを覚えています。
 ワールドカップ最終予選の前にチームが集中的にトレーニングできた時にも、良い形でオマーン、ヨルダン、オーストラリアとの3連戦に臨めました。プレー内容が良く、プレーにスピードもあった。あのぐらいスピードあるプレーができると良い結果を出せます。あの3試合で、我々はワールドカップの予選突破を決めたと思っています。
 昨年11月の欧州2連戦でも選手のコンディションは良くて、チームのために戦うという姿勢が徹底していました。それで良い結果が出せたのだと思います。

Q:勝者のメンタリティを持つという面での成長はどうでしょうか?

 その点では、成長はしていますが、まだ確立はされていないと思います。世界の強豪と対戦するときには、コンフェデレーションズカップのブラジル戦で見せたような、消極的な戦い方は絶対にしてはいけません。どんな相手にもリスペクトはしますが、相手のチームや選手に名前負けすることは、それ以上にやってはならないことです。相手が誰でも自分たちがどうプレーするのかを考えてプレーしなくてはいけない。
 勝者のメンタリティは、国によっては60年や70年かけて作られているものです。日本が世界的にも急速な成長を遂げていることは、私自身も強く感じていますが、とはいえ、すぐに勝者のメンタリティが備わってワールドカップで100になるというものでもありません。もちろん、できるだけ成長させるために最善の努力は続けたいと思っています。ただ、チームの1人、2人ではなく、チーム全体で持っていなくてはならない能力です。
 ブラジル、アルゼンチン、イタリア、ウルグアイ、コロンビア、それにドイツなどの強豪国は自分たちのコンディションが60パーセントでも勝ちきる力がありますが、私たちはまだそうではないので、引き続き努力していかなくてはなりません。

Q:日本のサッカーにはマリーシア(ずる賢さ)がないとよく言われますが、このことについてはどう思いますか?

 そもそも、日本文化にはマリーシアという要素がないと思います。私は選手にはずる賢くあることよりも賢くあることを求めていて、彼らが賢さをプレーに出せるように手助けしているつもりです。フェアプレーに努めることは必要ですが、フェアじゃない相手もいます。そういう相手に対して準備しておく必要はあるでしょう。

Q:ワールドカップの選手選考ですが、新しい選手が入る可能性はどのくらいありますか?

 現在、メンバー候補は63人いて、その選手らを重点的に観ていますが、そこに入っていない選手でも、非常に良いパフォーマンスを見せる者がいれば候補リストに入りますし、最終メンバーの23人に入る可能性もあります。今から数か月前には代表メンバーはすでに固定されていると見られていたのが、この数か月で新たに数人の選手が入って代表チームで活躍しています。本大会では試合ごとの移動距離も長く、高温多湿の中での試合になるので、コンディションの本当に良い選手を揃えたいと考えています。

Q:その63人の候補者のチェックポイントは?

 ワールドカップに行って活躍できるか、です。63人のリストには、これまで代表の合宿や試合へ呼んだことのない選手も含まれています。以前呼ばれていて最近呼ばれていない選手のことも、チェックし続けています。彼らはメンタル、フィジカルが良くなれば、代表復帰の可能性は十分あります。

Q:過去の大会メンバーにはサプライズ選出があったこともありました。今回は?

 それは選手次第です。それまで全く呼ばれてなかった選手が入ることは十分あり得ることです。ただ、ポジションにもよります。慣れやチームの約束事が必要となるポジションもありますから。

Q:90年大会では直前にFWスキラッチがイタリア代表入りしました。そういう選手がチームに与える影響は?

 その時点で活躍している、トップフォームの選手を入れるのは効率的だと思います。

Q:ブラジル大会グループステージでの対戦相手をどう見ていますか?

 まず、コロンビアはとても強いチームです。今大会が南米での開催なので、優勝候補の一つとしてあげられる可能性は高い。大会終盤に残っていても不思議ではありません。
 彼らは数年前のスペインに少し似ているように思います。国際的にはまだそれほど有名ではないけれどもハードワークするチームで、良い若手がいます。昨年のU-20南米選手権では優勝していますし、良いタレントが揃っていて、何人かはこの6ヶ月でワールドカップのメンバー入りしてくるかもしれないと聞いています。
 多くの選手が欧州でプレーしていて、中でもFWファルカオ(ASモナコ)はとても強力なセンターフォワードで、FWマルチネス(FCポルト)はどこのチームも欲しいと思うような選手です。ペケルマン監督は選手を育てるのがうまいですし、相手や試合によってやり方を柔軟に変えてきます。ベンチに多様な選手を置いて、試合の中で柔軟に対応する。非常に力のあるチームです。

Q:ギリシャは?

 ギリシャは、派手さもなく有名選手もいませんが、団結力に優れていて、パフォーマンスがとても充実したチームです。相手のミスに付け込み、相手の良さを消すという特長があります。私たちが絶対にやってはいけないのは、ビッグネームがいないからと相手を過少評価することです。ギリシャの選手は欧州の力のあるクラブでプレーしていますし、ビッグネームがいないとはいえ、団結力があってチーム力は安定していてコンセプトも明確なので、逆にそういう相手の方が戦いにくい場合もあります。

Q:ではコートジボワールは?

 コートジボワールは、ギリシャとは正反対のチームと言えるかもしれません。個の能力が高く、暑さにも慣れているので、ブラジルでの試合は彼らに有利でしょう。アフリカで1~2を争う能力のあるチームです。ただ、タレント性や基本的な身体能力には優れていますが、まとまりを欠くこともあります。
 FWドログバ(ガラタサライ)は35歳ですが、チェルシーでUEFAチャンピオンズリーグ優勝を経験しています。経験もフィジカルも技術もあり、パーソナリティも持っています。先月12月のガラタサライ対ユベントス戦をテレビで観たときに、ユベントスの方が力があると感じていたのですが、結局はドログバの決定的なプレーでガラタサライが勝ちました。MFヤヤトゥーレもマンチェスター・シティで中盤と攻撃陣の中継役として活躍しています。彼らは世界的にも非常に能力が高い2人だと思います。

Q:大会でのピーキングはどこに合わせようと?初戦でしょうか?

 初戦のコートジボワール戦にはいい状態で臨まなくてはなりません。一方で、ポジティブに考えてグループステージ突破後のことも頭に入れておかないとなりませんが、まずは良い状態で初戦に入って行きたい。
 私たちの組にはドイツやアルゼンチンのようなネームバリューのあるチームはいません。でも、チーム状態が良くてチームとして仕上がった時に対戦するとタフな相手ばかりです。ですので、私たちもメンタルでもフィジカルでもかなりいい状態で臨まなければ、相当厳しくなってしまいます。
 本大会ではできるだけ勝ち進みたいと強く思っているので、ブラジルのベースキャンプでは良いトレーニングをして食事にも気を配る必要があります。さらに、試合には長距離移動が伴うので、回復が重要になります。暑熱対策については、最良の策を求めてチームスタッフと検討を重ねています。

Q:日本代表を率いて4年目になりますが、この4年は早かったですか?

 ええ、余りにも早く過ぎてしまったと感じていますが、すごくいい時間を過ごせたということでしょう。苦しいと長く感じるものですから。自分にとってすばらしく、最高の経験だと思っているからこそ、ワールドカップでは良い内容と良い結果が必要だと感じています。しっかり戦って良い結果を出すことに集中して、いい形で締めくくりたい。それにはチームが良い内容で戦うことが大切です。良い内容のプレーをするほど勝つ可能性が高くなると感じているので、日本は良いサッカーをすることが大切です。

Q:ありがとうございました。