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トピックス

2009/11/16

JFAエリートプログラム[女子]活動レポート
ロジカルコミュニケーションスキル

その3 ロジカルコミュニケーションスキル
 実施:9月19日(土)19:30 - 21:00
 講師:田中澄枝[つくば言語技術教育研究所]

講師:田中澄枝[つくば言語技術教育研究所]

 このエリートプログラムの中で初めて触れるであろう一つがこの“ロジカルコミュニケーションスキル”だ。コミュニケーションとは、人間がお互いに意思や思考、感情を伝達し合うこと。言語・文字・その他の視覚・聴覚に訴える身振り、感情、声などの手段を使って行う ―― こう聞くと、「当たり前じゃないか」と思う人もいるだろう。ところが、普段何気なく交わしているコミュニケーションだが、レクチャーが進むうちに実はサッカーに通じる重要な役割が潜んでいることに気づかされていく。
 指導にあたったのは、JFAアカデミーでもロジカルコミュニケーションを教えているつくば言語技術教育研究所の田中澄枝先生だ。選手たちにとっても初めての講義ということでこの日は“考える力を鍛える”ことをテーマに進められた。サッカーは「考える」スポーツである。自分が「こうだ」という見方をしていても、時にまわりと意見が異なる場合がある。多様な見方が必要なのがサッカー。この年代でロジカルコミュニケーションスキルに触れることで、ものの見方、考え方を広げていく一つのきっかけとなってくれればという狙いがあった。

 言語のトレーニングとは、考えるトレーニング。トレーニング方法としては「聞く」「話す」「書く」「読む」の4つの要素がある。冒頭に田中先生の話を「聞いた」選手たちは、、次に簡単な“自己紹介”と“問答ゲーム” ―― つまり「話す」ことを学習する。この段階では選手たちもほとんど知らないもの同士。お互いを知るということは大切だ。選手たちにとっても自己紹介は緊張をほぐす良い機会になったようだ。問答ゲームとは、好きか嫌いかということを、主語を明確に、結論から述べる、根拠を示すというルールで行うもの。慣れてきたら今度は“ナンバーリング”に挑戦だ。これは好きな(あるいは嫌いな)根拠を整理する作業。例えばこうだ。「私はリンゴが好きです。その理由は3つあります。1つめは甘いから。2つめはサクサクしているから。3つめはジューシーだから」といった感じに整理していく。「日本語は主語がなくても通じます。そうするとどうしても“私”の意識が抜けてしまう。“私”はどう思うのか。英語ははっきりとしていますよね。私はこう考える、と意思を示すと、おのずと責任は誰にあるのかということも明白になります。“私”というものに立ち返って欲しいんです」とは田中先生だ。

ロジカルコミュニケーションスキル

 「書く」要素として行ったのが“問答作文”。「サッカーは楽しい」というテーマで原稿用紙1枚程度に自分の考えをまとめる作業だ。「楽しい」の中身はそれぞれ異なるはず。具体的に、なぜ?どうして?と理由の中身を掘り下げていかなくてはいけない。書くという行為が、こうなりたい → 何をすればいいのかにも繋がっていったようだ。この作文は田中先生によって添削され、翌日、選手たちの元へ戻った。

 最後に行われたのが「読む」。一枚の絵(たしろちさと画『絵本で育てる情報分析力(三森ゆりか著)』)を見ながら三人組で検討していく。何の絵か ―― 場所は?季節は?時間は?人物は何をしているのか?人間は見ているようで、実はこれまでの経験から判断してしまうことも多い。事実に基づいて検討し、初めて解釈が生まれてくる。ここからは一つの項目でも、いろんな方向から考えて判断する必要があるということが学べる。分析すること、聞かれたことに対して的確に答えること、目で見たものを理解して相手にわかりやすく伝えること・・・すべてサッカーにとっても大切なことだ。「一度触れると、日常生活においても頭のどこかに残っています。これはどうなんだろう?なぜ?を自分自身で意識すること、次のアクションを考えることが大切ですね。実は、これは大人がやっても難しいんですよ。子供たちの方がシンプルなのかもしれません。すべてがすんなりと理解できなくていい。今回のことで何か“気づき”が生まれてくれればと思います」(田中先生)。

講師:田中澄枝[つくば言語技術教育研究所]

 当たり前のように行っていることも、少し意識を変えれば、また違った意見に出会うかもしれない。サッカーも同じだろう。プレーの正解は一つではない。自分の意見をわかりやすく伝え、相手の考えに耳を傾ける。そうすればまた違ったプレーが生まれるかもしれない。コミュニケーションを円滑にかつ効果的に行えるヒントが満載の1時間30分だった。